真夜中の午前0:00に、「行く先は乗ってみてからのお楽しみ」という、何ともワクワクする列車が大阪駅から出発する。本当にこんなダイヤが存在するなら、是非とも乗ってみたいのだが、残念ながらフィクションである。
二股をかけられたことが発覚して失恋したOL、ケータイメールだけが友だちの孤独な女子高生、会社からも家庭からも見放された中年男性、芸能界への夢を断たれた女性、亡き妻への思いを抱えたままの初老の男性。それぞれに人生の傷を抱えた旅人たちがたどり着いたのは、「風町」という小さな港町。
現実には存在しないこの町で、旅人たちは町の人たちの優しさに触れる。それは田舎町独特の、人間というものを信頼しきったなかから生まれる自然な優しさだ。町の人たちはそれを「優しさ」だとは思っていない。あくまでそれは人間として普通のことなのだ。そんなナチュラルなぬくもりが、人生の殺伐とした出来事に疲れ果てた旅人たちの心を開いていく。
鉄道ファン必見の幻の名列車も、本作の見どころのうちのひとつだろう。
EF58-150(ゴハチ)、マイテ49-2、スハフ12-702。ゴハチが1等展望車のマイテを牽引して力強く走行する姿は、この映画のファンタジー性をより加速させていく。
映画初出演の徳永英明だが、初出演とは思えないナチュラルな演技が好印象だった。櫻井淳子の安定感のある演技、ベテラン大滝秀治のあたたかな演技もいい。女子高生役の多岐川華子はイマイチ役に入りきれていない甘さにガックリ。中年男性役の大平シローは、中途半端すぎて哀愁が足りない。どんなシーンでも目の奥がいつも同じだ。これでは同じ立場の人たちの感情移入も難しいだろう。
ときに、タイアップ企画として、新宿ゴールデン街のバー「時」で『旅の贈りものカクテル』、自由が丘(奥沢)のお好み焼き・たこ焼き屋「笑都 SHOW TO」で『旅の贈りもの焼き』が食せるという。映画とあわせて楽しんではいかがだろうか。
旅の贈りもの -0:00発(DVD)
監督:原田昌樹
出演:櫻井淳子/徳永英明/大滝秀治
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.tabi-000.jp/
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