なんと10回目! 毎回好き勝手に自分の音楽嗜好を書いているだけだというのに(苦笑)。読者のみなさんと編集部に感謝しつつ、今後も好き放題書かせていただきますね!
さて、今回ご紹介するのは「ゲイリー・ムーア」。その表現力の凄さから、ときに「人間国宝」とも称されるアイルランド出身のギタリストです。歌も歌いますが、あえて「ギタリスト」と紹介させていただきましょう! ギタースタイルという面で言うならば、俺が一番影響を受けたと言っても過言ではない人です。毎回毎回、くどいほど「ハードなギターサウンドにポップでキャッチーなメロディが乗っているバンドが大好物!」と書いていますけども、ことギターに関して言うならば、ここに「泣き」も必要なんですね。
「VAN HALEN」なんかのアメリカン・バンドによってハードロックに目覚めた俺ですが、もともとニュー・ウェイヴでロックに目覚め、その中でも特に暗い曲が好きだった俺には、カラっと乾いたアメリカン・ロックに少し物足りなさを感じてもいました。なぜかと言えば、単純にもっとバラードが聴きたいな、と。もちろんアメリカのバンドにもバラードをやるバンドはたくさんいるんだけど、俺の好みからすると、どうも甘ったるくて。
で、あるとき「あ、ヨーロッパのバンドを聴けばいいのか!」という単純なことを思いつき、「MICHAEL SCHENKER GROUP」、「VANDENBERG」、「SCORPIONS」なんかを聴いてみたんだけど、いやー、期待通り、バラードの暗いこと暗いこと(笑)。まあ、どのバンドもHR/HMバンド(ハードロック/へヴィメタル)なので、ハードな曲の方が多いんだけど、そのハードな曲にもアメリカのバンドとは違う哀愁が漂っていて、湿り気(笑)を求めていた俺にばっちりとハマったのです。
その中でも特に気に入ったのがゲイリー・ムーアなのでした。先に挙げたそれぞれのバンドにも凄腕ギタリストがいて、それぞれがいわゆる「泣き」のギターを弾いていたんだけど、ゲイリーの艶のあるサウンドと、むせび泣くようなソロが、俺の琴線に触れまくり! ゲイリーは速弾きも凄いんだけど、テクニックをひけらかすような曲は無く、ほとんどの曲がゆったりとしたメロディから、どんどん熱く激しく泣き叫ぶように盛り上がっていく。これが胸をかきむらしられるように哀しくて切なくてたまらないのよ。
さて、そんな彼のギターはハードロックの世界で絶大な支持を得ていたんですが、この人、実はハードロックだけではなく、ジャズでもブルーズでも、器用になんでも弾けちゃうんですね。で、80年代半ばからのハードロックバンドの間で“ルーツ回帰ブーム”があり、猫も杓子も「俺らのルーツはブルーズだぜ!」なんてことを言い出したときに、「ブルーズってのはこうやるんだ!」、とばかりにブルーズアルバムを作ったら、これがまた見事な出来で、それまであまり人気の無かったアメリカでも大ヒット。で、ゲイリーったらハードロックを止めて、そのままブルーズミュージシャンになっちゃった……。
それ以降、たまに思い出したようにロックアルバムを作るものの、デジタルミュージックとの融合だのと、彼らしくないものばかりで、結局ブルーズに戻るということを繰り返しているここ数年のゲイリー。俺は正直なところ、昔みたいにハードロックやってほしいなあ、と思っていました。これ、俺だけでなく日本中のファンがそう思っていたようで、ゲイリーが89年以降来日していないのは、日本ではハードロックばかり求められるのが嫌……なんて噂もあったりして。
そんななか、最近のヨーロッパツアーではハードロック時代の曲をやっている、というニュースとともに、突然の来日発表! これは弾きまくりゲイリーが観られるのか! と日本中のファンが色めきたったところ、「日本ではブルーズをやるよ」と。がっかり。とはいえ20年ぶりの来日で、俺にとっては初の“生”ゲイリー! ブルーズでもなんでも、これは観ないわけにはいかないでしょう!!
ライヴ当日、観客の大きな期待をよそに、なんの演出もなくふらっとステージに登場した御大でしたが、一発ギターをかき鳴らしたその瞬間……もう、全身総毛立ち!
ガキのころから憧れまくったあの艶のある官能的なトーンもそのままに、より表現力を増したギター……。もともと表現力に長けた人だったけど、ブルーズをやったことによって、それがより磨かれていったのかな。「ギターの音色だけで鳥肌が立った」、そんなあまりできない経験をしましたよ。
ハードロックとかブルーズとか、ジャンルなんてどうでもいい。ゲイリーはゲイリー! もう、人間国宝どころか、世界遺産に指定しましょうよ。ロック好き、いや、音楽好きなら一度は観ておくべきギタリストです!
今回紹介する動画はあえてライヴヴァージョンで。絶対観てよ!