キング・オブ・アスリート!――走って跳んで今度は投げて

先月下旬のこと。新聞各紙のスポーツ面やインターネットニュースにて、こんなニュースが流れていた。
「十種競技、日本人初の8000点台を狙う」
この見出しだけで、この種目がどういう種目で、“8000点台”がどれだけのものかわかる人はかなりの陸上通だ……あ、この種目は陸上競技である。そこからすでに説明が必要な可能性が高いかも。

十種競技とは陸上競技の文字通り10種目の混成競技で、オリンピックにも採用されている(男子のみ。女子は七種競技)。英語名は『デカスロン』で、十種競技を取り上げた漫画のタイトルにもなっていることから、こちらのほうが有名かもしれない。
競技は2日に分けて以下のように行なわれる。

初日:100m、走り幅跳び、砲丸投げ、走り高跳び、400m
2日目:110mハードル、円盤投げ、棒高跳び、やり投げ、1500m


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円盤だって投げちゃうわけです、十種競技は
※写真はイメージです

これら種目の記録を得点化して順位を競うのである。上記でわかるとおり、陸上のトラックからフィールドまで、主要種目をまんべんなく高いレベルでこなさなければ上位にはたどり着かない。勝者の称号“キング・オブ・アスリート”がピッタリな競技なのである。
各種目の採点式はここでは割愛するが、記録を入力するとポイントを出してくれるサイトがあるので、そちらで遊んでみてください。
十種競技の採点

なお、「日本初の8000点台」が世界的にはどのレベルにあるのか。
かつて十種競技の選手だった現在スポーツクラブインストラクターのAさんによると「それでも世界的にはいまだ“二次予選”といったところですね。十種競技の場合は、砲丸などの投擲種目よりもトラックやジャンプ系がやや重視される採点方式になっており、これら種目での記録上昇が重要ですね。私は投擲系だったので厳しかったですが(笑)」とのこと。最近のオリンピック金メダリストの得点が8900点前後であり、なるほど、8000点台ではまだまだ世界は遠そうだが、8000点はオリンピックに文句なく出場できる標準A記録(突破選手は各国最大3人エントリーが可能)。2年後のロンドンオリンピックには8000点越え記録で堂々と出場してほしいものだ。

あ、最後になりましたが、この8000点越えが期待される選手は右代(うしろ)啓祐選手(国士舘大学)。今年4月に日本歴代2位となる7930点を記録した現在の第一人者であり、標準B記録(A記録突破選手がいない場合、各国1人エントリーが可能)7700点はすでにクリアしている。先のニュースで報じられたドイツの世界大会では8000点突破はならなかったが(7547点も総合では2位)、右代選手の今後の活躍、そして十種競技に注目しよう。