出会いと別れの電気コンロ

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こちら、お別れする電気コンロ
夏が始まるころ、台所のコンロを新調することにした。
壊れた機能があってもこれまで12年以上も我慢してきたが、そろそろ引退してもらうことになったのだ。これで時代遅れ気味の我がキッチンも、少しはアップグレードできるかもしれない。すぐにコンロ検索の日々が始まった。

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とまあ、こんなふうにして掃除するわけです
ガスコンロが多い日本と違い、アメリカの一般家庭はほとんどが電気コンロのお世話になる。電気は比較的安全なのでその点では充分に満足なのだが、ガスのようにパッと強火にしたり、ポッと消したりができない。ノロノロと熱くなりノロノロと冷える。特にこの余熱がクセモノで、うっかりこぼした料理がたちまち焦げ付いてしまう。もちろん電熱線の渦巻き部分は簡単に取り外せるし、受け皿も水洗いできるのだが、マメに掃除をしていないとコンロ周りは悲惨な状態になる。

そこを踏まえて私たちが選んだ新コンロは、ガラストップ付電気コンロ。なんのことはない、渦巻きコンロの上に一枚の強化ガラスを載せただけの代物だ。しかし、ソースをこぼそうが、煮汁をたらそうが、お掃除はサッと一拭き。いちいち部品を分解して洗う必要がない。黒ガラスのシックなおもむきと言い、こんな素晴らしい出会いはない、と飛びついた。

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売っているのはほぼガラス板スタイル。
人気商品か
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そして新しい出会い
さっそくウキウキと使い始めたが……少し話が違うぞ。ガラスの下の渦巻きは、以前より早く熱くなるものの、冷却ノロノロ反応はそのまま。さらに、黒ガラスの余熱はしつこい。にもかかわらず、使用書には「拭き掃除はガラス板が冷えてから行なうように」と書かれている。それじゃあ、吹きこぼれたスープは、やっぱりガチガチにこびりついてしまうじゃない?
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同じ"渦巻き"でも近未来的ですね
かくして、渦巻きの分解掃除からこそは解放されたが、ガラス板の頑固な汚れをスポンジでこする羽目になった。使用書に背いて、ガラス板が熱いうちに濡れ布きんで拭いてもみた。 ジュージューと威勢は良かったが、余熱で固くなった汚れはなかなか落ちない。よくよく見ると、黒ガラスの黒いフィルムが剥げたような跡すらある。「サッと一拭き」のはずなのに……。

アテが外れてちょっとガックリだが、モダンな外見に免じて大目に見ることにしよう。このコンロのお陰で「ちょっと見キッチンの近代化」が図れたし、なんと言っても出会ってしまった以上、簡単には別れられないんだから。