バンクーバーのダウンタウンからバスとフェリーを乗り継いで約1時間のところに小さな島、ボウエンアイランドがあります。ダウンタウンからこんなに近いのに、この島はまるで別世界。喧騒から逃れ、静寂な雰囲気を求めて移り住んだ芸術家や別荘を持つ人たちが、この島の自然が壊されないよう開発から守っているのです。
小さな島の大きなハンギングバスケット
静かな湖畔のピクニックエリア
人4人と犬1匹のランチ7月半ば、その島に友人たちと遊びに行きました。私がこの島を訪れるのは2回目、去年の秋にも行ったのですが、その時はひと気もなく閑散としていました。でも今回は夏の真っ盛り。別荘に行き来する人や、リュックを背負ったハイカーも見られ、活気のある華やいだ雰囲気が感じられました。
まずフェリーを降りると、大きなハンギングバスケットがあちこちに飾られ、生き生きとしたたくさんの花が目に飛び込んできました。秋には見られなかった光景です。
誰もいない静かな湖とにかく小さな島なので、目的地のキラニーレイク(Killarney Lake)には、お昼前に到着できました。この湖はこの島の唯一の名所、といっても湖のほとりには木のテーブルとベンチが3組、それにトイレがあるだけ。そこで私たち、人間4人と犬1匹で、家から持って来たおにぎりのランチを楽しんだのです。夏のハイシーズンだというのに、ピクニック エリアにいたのは、私たちと女性2人組のふたつのグループだけでした。
食事の後は、湖の向こう岸まで続くトレイル(野原や山などにできる自然道)を散歩しました。久しぶりに自然の中を歩くワンちゃんも大喜び。原生林の中をしばらく歩くと、暖かい陽射しが降り注ぐ穏やかな湖の風景が目の前に広がっていました。鏡のような湖面には開きかかった蓮の蕾がいくつか浮かび、時が止まったような錯覚が起きるほどの静けさ。
湖畔で遊ぶ犬たちその静けさを破って、犬と飼主が来て水辺で遊び始めました。飼主が長くて重たそうな木の棒を遠くの水面に投げると、元気な黒い犬は猛烈な速さで泳ぎ、岸まで持ち帰るのです。次に現れたのは太目の犬2匹をつれた中年の女性。彼女が湖に物を投げても2匹の犬は知らん顔、お風呂に浸かっているように湖の中でじっとしています。湖水に手を浸してみると、とても暖かく温泉のよう。
そこに大きなコリーと小さな白い犬を連れた婦人が来ました。大きな犬と小さな犬は、とても仲が良さそう、まるで家族のようです。
犬たちは見知らぬ犬とすれ違っても、互いにほえることもなく、飼主同士は短い会話を楽しんでいます。この湖はワンちゃんの天国だったのです。
入り江にある港の風景港に戻った私たちは、港近くの自家製のパンを焼いているお店の内庭でお茶をしました。地図を見てもクルマで島を一周しても、この島には余分なものは見当たりません。港の近くに小さな図書館・ゴルフ場・公立学校がひとつずつ。後は生活に必要なものを売るGeneral Storeが1軒と数件のレストランや食堂があるだけ、本当に小さくてシンプルな島なのです。
夕方、と言っても陽はまだ高く、帰りのフェリーを待つ港でも心地よい時間を過ごしました。暖かい陽射しを浴び、爽やかな海風に吹かれながら、入り江になっている港の風景を見ていると、ずっーと日が暮れるまでここに居たいと思ったほどでした。
たくさんのハンギングバスケットが飾られ、ワンちゃんたちがノビノビ遊べる夏のボウエンアイランド。せっかちな私が、何もしない贅沢な時間を過ごせたのは、ゆっくり時間が流れるこの島に出会えたからだと思っています。