3人家族は出会いが待ってる夜行列車

100707_01_01.jpg
北京西駅のホーム
広い国土を持つ中国では、縦横に寝台列車がまだたくさん走っていて、数日かけて移動するスケールの大きな旅を味わえます。

寝台には主に二等寝台の硬臥(インウォ)と一等寝台の軟臥(ルワンウォ)の二種類あります。硬臥はパイプベッドが上に3段もあり、あちらこちらの音も響くオープンスペース。軟臥は鍵のかかる4人一部屋の個室で、2段ベッド。値段はそれほど高価なものではありませんが、軟臥の車両は少ないので切符を取るのが難しいこともあります。我が家は夫と息子の3人家族、ちゃんと夜は眠りたいので軟臥を取ります。4人で一室ゆえに家族全員でも母子ふたりで乗っても、必ず1人か2人は他人と同室。「他人と一緒は嫌だ」と敬遠する人もいるでしょうが、旅は道連れ、出会いを楽しんでしまいましょうよ。

中国で軟臥の利用者といえば、役人や富裕層、そして外国人など特権階級の定席。

100707_01_02.jpg
コンパートメント。これぞ寝台列車
中国で初めて夜行列車で旅をした山西省大同、北京西駅を夜11時過ぎに列車は出発します。この日同室だったのは、身なりのよい50代ぐらいのオジサン。すでに夜更けでも見知らぬ人と一室ともにするわけですから、軽くおしゃべりするのが社交辞令。こちらが外国人とわかれば、自分は「フランス人」と言い放つ明るさのオジサン。聞けば炭鉱関係の仕事をしていて、大同へ帰るとのこと。もちろん炭鉱夫ではなく炭鉱会社の幹部、ときどき北京へ出張に行くそうです。ジョーク連発のオジサンはなかなか楽しい旅の友でした。

その帰りの列車では、お金持ちそうな奥様と乗り合わせ。奥様の息子は海外留学中で、本人も海外旅行の経験あり。果物ナイフでりんごを剥いてくれるのは、なんだか懐かしい光景。旅行が趣味の奥様、当時まだはしりだったチベット旅行の写真をたくさん見せてくれて、日本のことも質問していました。

その後中国ではチベットへ行く青蔵鉄道が開通し、旅行ブーム到来、団体旅行から個人旅行へと旅の形も変わり、より快適に旅をすることを考え始めました。軟臥や軟座(一等席)の乗客にも変化があることに気づきました。

100707_01_03.jpg
列車で会った坊や
ある時、北京へ家族旅行からの帰りというお父さんがひとりだけ別のコンパートメントを割り当てられてしまい、私たちと同室になりました。いかにも地方から来たようなやさしそうなお父さんは、上段の寝台で中国の鉄道旅行の定番食であるカップ麺をひとりですすっています。私たちが北京のベーカリーで買ってきたサンドイッチを食べていると「なにそれ、中身は何だ?」と興味津々。東の饅頭から西に行けばナンのようなパンへと変わっていく麦文化の中国北方、それでも日本や欧米のパンは田舎にはなく、サンドイッチなど珍しい食べ物。
翌朝お父さんの小さな坊やが遊びに来てくれました。このぐらいの年頃なら軟臥のベッドで母親と一緒に寝ることも可能。

またある時はキャリア風の若い女性も。女性一人旅で軟臥とはゆとりがあるのか、あるいは安全からなのか。彼女は列車に乗っている間ずっと携帯でショートメッセージを打っているか、寝ているかでほとんど話すことはなし。それもまたイマドキの中国の若者。

100707_01_04.jpg
朝のトルファン駅
100707_01_05.jpg
列車から見たシルクロードの夕日
列車の中では懐かしい光景がよみがえります。人との会話も昔の列車の旅を思い出させてくれます。でもそれも段々うつり変わってゆくのでしょう。