かつて小学生だったころ、音楽の授業で習った楽器にはどんなものがあっただろうか。
“ふえ”と言ったら最初ソプラノリコーダーで、高学年になってから“でかいふえ”、アルトリコーダーが出てきたと記憶している。大太鼓や小太鼓を「やりたい人?」という希望制で叩かせてくれたりもしただろうか。私は小学生時のみならず、ついにスティックやバチは握ったことなくいまに至ってしまったのだが。あとはハーモニカ……は幼稚園から小学校低学年でやったか。吹くだけでなく吸う音もあるハーモニカ。いま考えればよくそんな難しいことをしていたものである。
さて、そんな小学生のころにおなじみの楽器群で、ピアノ風の鍵盤から吹き込み口が出ている細長い楽器、覚えているだろうか。覚えていますか。ではその楽器名は?
こちらヤマハの「鍵盤ハーモニカ」
である『ピアニカ』
『ピアニカ』? それに『メロディオン』?? どっちなんですか、と聞かれればどちらも正解で、そしてどちらも間違っている。『ピアニカ』にしろ『メロディオン』(さらに別名もあり)にしろ、その楽器には違いないのだが、いわゆるこれは“商標名=商品名”である。楽器の名前としては「鍵盤ハーモニカ」が正しいものなのだ。ちなみに『ピアニカ』は東海楽器製造ならびにヤマハ、『メロディオン』は鈴木楽器製作所のそれぞれ商標である。
商標名が一般名称化した有名な例としては紙を留める『ホッチキス』が挙げられる。『ホッチキス』は現在のイトーキが明治時代に輸入した際、アメリカのホッチキス社の製品であったことから『ホッチキス』と名付けられ、いまに至っている(ちなみに文房具としての『ホッチキス』の商標はかつてイトーキが所持していたが、すでに消滅している)。
「ホッチキス」以外の一般的な名称は「ステープラー」であり、JIS規格(日本工業規格)でも「ステープラ」と登録されている。
このような例は探してみれば数多い。プラスチックの保存容器をすべて“タッパ”と呼んでいないだろうか(タッパーウェア社の商標)。電子レンジを“チン”と呼んでいないだろうか。ん、これは話が違う?