異国の懐かしい味に出会った……茂原七夕まつり


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年に一度、牽牛と織女が出会う日、七夕。
七夕の祭りといえば東北・仙台が有名だが、関東でも神奈川は湘南平塚、東京の阿佐ヶ谷、埼玉・上福岡などと並んで評されているのが、千葉県茂原市の七夕まつりだ(7月24〜26日)。

昔は地元高校生にとっては「茂原の七夕まつりに誘う、誘われる」が恋のステイタスになっていて、祭りが近づくと皆なんとなくそわそわしたものだ。かくいう私も一度だけ同じクラスの男の子に誘われた記憶がある。人混みをかき分けてふたりで食べたかき氷の味は、今も甘酸っぱい思い出だ。

あれからン十年、飾りもひところの華やかさはなくなり、年々寂しくなったという祭りの噂を聞きつつ、一方で全国的にブレイクしている「YOSAKOI踊り」や徳島から輸入?した「もばら阿波踊り」など新しい踊りの企画で活気を盛り返しているとかで、久しぶりに足を運んでみた。踊りのメインは夜だが、飾りをゆっくり見るには昼間の方がいい。


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この肉を削って挟めばケバブのできあがり

目の前には親子連れ、友人同士連れだって歩く少年達、浴衣姿の少女達が大半である。祭りの“主役”達はぞろぞろと飾りの下を練り歩いている。異邦人気分の私。
屋台を見ていて目新しいものに気付いた。
巨大な肉の塊が棒につきささってくるくる回っている。彫りの深い顔立ちのお兄さんたちが回転する肉の側面を削り取り、ピタパンにはさんで売っている。ああ、見覚えがある。トルコ料理のドネル・ケバブだ。懐かしい。14年前にトルコ共和国に行って食べたことがあった。香辛料の強いシシ・ケバブよりも好きな肉料理だった。
都会では最近よく見かけるが、ここ茂原でも見られるとは思わなかった。
屋台のお兄さんに話しかけた。トルコのどこから来たの? 私もトルコに行ったことがあるのよ、と言ったら、「どこに行きましたか?」と訊かれた。

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実録七夕ストーリー・茂原で14年ぶりの再会…

いわゆる観光パックツアーだったから、あれこれ思い出すまま地名を上げていった。
「イスタンブール、カッパドキア、パムッカレ、コンヤ、エフェソス……」
「エフェソス! おお!! ワタシ、その近くの町の出身です」
そして相棒を示して、「彼はカッパドキアから」
「まあ! いつ日本に来たの?」
「10年前」
「じゃあ向こうのどこかですれ違ったかも知れないね!」
……14年前に異国の地(彼らには地元)を踏んでいた者同士が、今日この異郷の地(私には地元)で出会う不思議な偶然。
祭りでドネル・ケバブの屋台を見たのは今回が初めてだから14年間出会う機会はなかった。
今日の七夕まつりで会えたんだね。
「ひとつください」
ピタパンにはさまれたレタスと肉と特製ソースの味を堪能。味覚は記憶を呼び覚ます。遠い国のバザールで故郷の友に会ったような懐かしさ。
華やかな飾りもいい。勇壮な踊りもいい。
でも、しみじみ思う。
祭りの楽しさって、人とのふれあいなんだね。