鹿児島に夏を連れてくる六月灯

鹿児島で夏の祭り!といえば神社の参道や境内に、四角い木枠に絵や文字の書かれた紙を貼った素朴な灯籠を献灯する夏祭り「六月灯」(ろくがつとう、鹿児島弁では「ろっがっどう」)です。六月灯は県内各地で行なわれますが、特に鹿児島市内のそれは7月1日の祇園之洲・八坂神社を皮切りに、神社の規模の大小を問わず毎年決まった日に行われ、氏子や地元の人たちが夕涼みがてら出かける姿が見受けられます。
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灯籠が飾り付けられた南洲墓地

照國神社など2日間で10万人以上が訪れる六月灯もありますが、私は7月17、18日に開催の、自宅から歩いても3分ほどの南洲神社に出かけてみました。ここは西郷隆盛はじめ西南戦争で亡くなった2023名が眠る南洲墓地に隣接しています。

まだまだ日中の暑さが残って空も明るい午後7時前、まずは参道の両端に連なる屋台を冷やかしながら長い階段を登って境内へ向かいます。神社によっては小中学生や地元の方が描いた絵が貼られた灯籠が並んでいますが、ここは企業名や個人名の書かれたものが多いようです。
南洲墓地で手を合わせ、神社で柏手を打つと境内を一周。ここには西郷隆盛のひ孫に当たる陶芸家がオーナーの茶屋「西郷庵」があり、店先で何やらいい匂いがしています。
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「西郷庵」特注のさつま揚げ。1本100円。
次はいつ食べられるのだろう?
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「しんこだんご」も手際よく焼かれる。
ちなみに5本400円なり

近づくとそこでは棒状のさつま揚げのようなものが炭火で焼かれていました。1本100円、試食をいただいたので食べてみると、コショウがピリリときいたさつま揚げでした。聞けばメーカーにベーコンとコショウ入りの特注さつま揚げを作ってもらったとか。こりゃ〜ビールに合うぞと思っていたら「これ2本とビールで500円だよ!」とすかさず売り込むあたり、さすが商売人(笑)。
またさつま揚げの隣では「しんこだんご」が香ばしく焼かれています。米の粉の団子を焼き、やや甘めの醤油ダレをつけたものを鹿児島では「しんこだんご」と呼びます。そういえば参道の屋台でもたこ焼き屋や綿あめ屋と並んで2件ほどが「しんこだんご」を売っていましたから、唯一、鹿児島らしい屋台メニューかもしれません。 090804_04.jpg
日が落ちる寸前の桜島と、黄色く延びる光は屋台
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このあたりにこんなに人が住んでるの!?というほどの人出
さつま揚げをかじりつつ境内をうろついていると、午後7時半を過ぎたあたりでようやく日没。地元の同好会の方々による大正琴や演舞の披露が始まるころには桜島も薄墨を引いたようになり、その裾野から延びるように見える屋台の灯りが眩しくなり始めました。

そしてやっと、境内でも六月灯の主役である灯籠に明かりも灯りだしました。裸電球が灯籠の中で光を放ち、ぼんやりと橙色に染め上げ、訪れる人々を優しく迎えてくれるのでした。