10 クローバーフィールド・レーン

10cloverfieldlane_01.jpg8年前、度肝を抜く演出で観客に絶叫をもたらした『クローバーフィールド/HAKAISHA』。同J.J.エイブラムス製作により、続編を匂わせる本作『10 クローバーフィールド・レーン』が堂々の完成! 一般市民の平穏な日常生活をぶった切った“奴ら”が、またやって来るのか?!

スーツケースに身の回りの物を無造作に投げ込み、車に乗り込むミシェル(メアリー・エリザベス・ウィンステッド)。スマホの着信に気を取られながらハンドルを操作する彼女を、容赦のないアクシデントが襲う。意識を取り戻した彼女を待ち受けていたのは、信じがたい環境だった……。

10cloverfieldlane_02.jpg『クローバーフィールド/HAKAISHA』の続編なのかどうか、それすらも明らかにされず、否、むしろそれを示唆する要素も何も全くないままに、物語は進んで行く。ラストのクライマックスでようやく、“それ”との繋がりを認識することができる。『クローバーフィールド〜』の続編というよりはサイドストーリーやスピンオフであり、例えるなら「クトゥルフ神話」のように、『クローバーフィールド〜』自体がすでに(その全貌は闇に包まれたままにも関わらず)神話体系化され、その世界観を土台にして別の作家が描いた、全く別の惨劇のひとつが本作なのだ。

演出的にも技術的にもストーリー的にも、破綻している箇所が全くないというのは、称賛に値する点といえよう。主要3キャストは、まだ現時点では誰もが知っている大スターの部類には入ってない俳優たち。だが、だからこそ先が読めず、ハラハラ感も大いに増す。最初から最後まで、息もつけないほどジーーーッと画面に見入ってしまう緊迫感。途中で起こってしまうやるせない不条理にしても、理想主義で作られた甘々の映画の世界ではなく、現実世界では残念ながら起こり得るガチなリアルであることを、観客にまざまざと思い知らせる。

そうして怒涛の104分が終わったあとでふと気づく。これってSF映画の不朽の名作のアレの構造も含んでるな、と。アレが何かはタイトルを書くだけでネタバレになるから書かないが、アレに似ていようがいまいが、アレとは別の切り口で大いに楽しめて大いに怖がれる、極上のエンタメ作であることだけは確かな、あなどれない傑作なのだ。

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監督:ダン・トラクテンバーグ
製作:J・J・エイブラムス
脚本::ジョシュ・キャンベル、マット・ストゥーケン、デイミアン・チャゼル
出演:メアリー・エリザベス・ウィンステッド、ジョン・グッドマン、ジョン・ギャラガー・Jr.
配給:東和ピクチャーズ
公式HP:10cloverfieldlane.jp
公開:6月17日(金)全国ロードショー

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