先日、依頼されて「医者」のイラストを描いた。最初に白衣にネクタイ、という組み合わせで下絵を提出したところ、担当者が[ケーシーにしてください」という。
ケーシー? 聞いたことがないのでネット検索、「スタンドカラーの白衣」のことをそう呼ぶと知った。さては「ケーシー高峰」のケーシーとはこれであったか、と初めて納得した。そうか、と思ったのもつかの間、ひょっとしてこのケーシーというのは昔見た米国発のテレビドラマ「ベン・ケーシー」に由来するのではないかと調べてみると、案の定である。というわけで
<ベン・ケーシー⇒ケーシー型白衣⇒ケーシー高峰>
という順番なのか、
<ベン・ケーシー⇒ケーシー高峰⇒ケーシー白衣着用>
というどちらの順番なのかはともかく、どうやら出自が「ベン・ケーシー」であることは間違いなさそうだ。わからないのは米英でもあの形の白衣を「ケーシー」と呼んでいるかどうかだが、これはこのあとの宿題としておく(何を調べてるんだか)。
今回は「茄子マリネ」。
まさに簡単で、美味!ところでそんな古いドラマを思い出してそういえば、と気がついたのはケーシー同様、昔見たドラマのタイトルを未だに引きずっている自分がいることだ。シェパードを見れば「お、リン・チン・チンだ」と言ってしまうし、コリー犬なら「ラッシー」だ。おそらく50代以上の人なら腑に落ちるものがあるに違いないと思うのだがどうだろう。
こんな風に何かのキャラクターが「代名詞」になってしまうことが時々ある。てっぺんにポンポンのついた毛糸の帽子「正ちゃん帽」は漫画「正ちゃんの冒険」が由来だし、女性のパンツ「サブリナ・パンツ」は俗に言う「カプリ・パンツ」の一種だが、映画「麗しのサブリナ」でオードリー・ヘップバーンが履いたことからそう呼ばれるようになったのは有名な話だ。
一般的な話だけならともかく、個人的にもそういうことがたくさんあって、春の夕空に三日月を見て「チェシャ猫の月だ」と言ったり思ったり(春の夕方に出る三日月は上に向かって開いている)してしまうのは、ディズニー作品「不思議の国のアリス」が由来だし、パーカーのフードをかぶった姿を見て「コイソモレ先生」と夫婦で言い合うのは、しりあがり寿先生描くところの同名の漫画が出典だ。
きっと誰でもそんなモノやコトの呼び方をしているんだろうな、と思う。困るのはそれが一般に流通している使い方か、個人的なごく狭い世界でしか通用しない言葉かを忘れてつい、後者を普通に使ってしまうことである。「ナニソレ?」と言われると説明に困るからだ。
それにしても最近はこういう現象が少ないですね。共通の単語を多数の人々が共有しなくなったように感じるのは気のせいだろうか。「誰もがみんな知っている」というコトが少なくなった、そう言う印象。
「流行歌」というものがなくなったことも大きいのではないか、というのが僕の思いついた推論。その昔、「こんにちわ」といえば「赤ちゃん」だったし、「見上げてごらん」と言えば「夜空の星」だった。「ちょっと前なら」というと「覚えちゃいるが」だったし、「わかっちゃいるけど」といえば「やめられない」だった。大勢がユニゾンで「ふわふわとした願望」を唄う近頃の楽曲からはなかなかそういう「連想」にいたるような「流行語」が生まれにくい。
そしてかつての流行歌が映像と結びついているケースが多かったことを表すのが、今挙げた「流行歌」の多くが映像作品として「映画化」されていたことだ。映像の共有は日常の出来事との新しい「つながり」を産む。そして日常の中へ持ち込まれた「共有言語」が新たなイメージにつながるのは当然の帰結である。
かつて名司会者・玉置宏氏をして「歌は世につれ、世は歌につれ」と表された「老若男女、誰もがみんな知っている流行歌」や、そのスピンオフとして作られる映像がなかなか生まれないことが「多数の共有言語がないこと」の遠因ではないか、と推論するのであります。
もっとも最近の映像は漫画が原作の作品が多いから、流行歌の役割は漫画に移ったのかもしれない。例のエレキテルの「だめよ〜……」も漫画的表現だし、共通言語は漫画的なエリアから発生していると考えることもできそうだ。ただ、そうなると「老若男女」の「老」の部分(漫画をほとんど読まない僕を含む)が共有できないので、そこに分類される人達はなんとなく「蚊帳の外」に置かれることになるんだろう。最近は漫画の読み手も高年齢化しているから、そこは断定できないけれど。
加えて変化のスピードが早いことも影響しているんだろうな、とも思う。流行語や流行り物の出現と消滅のサイクルがひどく速いので、日常と結合する前に消えてしまうのだ。先日のハロウィンの日に渋谷で大量発生した朱美ちゃん3号も来年はいないだろう。芸人さんもたいへんだ。
そんなこんなで高速化する世の中に疲れた日の「かんたんレシピ」は「茄子マリネ」でゆったりと。季節の茄子はやすくてオイシイ。しかもかんたん旨くて財布も落ち着きます。
しかしあの「エレキテル連合」ね。トリビュートの「日本ゲゲゲイ連合」を見てその思いを強くしましたけど、70〜80年代の寺山修司や林海象のイメージとダブル部分があると感じるのはどうなんですかね。なぜか戸川純なんかも思い出すし、歴史は繰り返す、てことなのかしら。今あらためて見ると戸川純て、かっこよかったなぁ。なお、表題はテレビ番組「名犬ラッシー」の主題歌から。
というわけで今回もこの辺で。カレンダーも今月を含めてあと2枚。みなさま風邪など召しませんよう。次回更新は11月18日の予定です。
【Panjaめも】
●ケーシー
●ケーシー高峰
https://www.youtube.com/watch?v=Pu-d0naPVNw
https://www.youtube.com/watch?v=No1Tn8Crbgc
●ベン・ケーシー
https://www.youtube.com/watch?v=obtaNQIqdFQ
●リン・チン・チン
https://www.youtube.com/watch?v=ao7gB0kjY_Q
●ラッシー
https://www.youtube.com/watch?v=oJ_AheUo70w
●正ちゃんの冒険
http://www.shochan.jp/Fashion/
●麗しのサブリナ
●月の呼び名
http://www2s.biglobe.ne.jp/~yoss/moon/moon.html
http://koyomi8.com/reki_doc/doc_0203.htm
●映画「こんにちわ赤ちゃん」
https://www.youtube.com/watch?v=5IEOedcvETg
●映画「港のヨーコ横浜横須賀」
http://movie.walkerplus.com/mv18224/
●映画「見上げてごらん夜の星を」
●日本ゲゲゲイ連合
https://www.youtube.com/watch?v=YI8T6u1J6Jw#t=12
●林海象
https://www.youtube.com/watch?v=PqHt1qCzY44
https://www.youtube.com/watch?v=x5KpzLbB5y0
●寺山修司
https://www.youtube.com/watch?v=MThQ8kQHEyg
●戸川純
https://www.youtube.com/watch?v=VQkG-5M0qd8
https://www.youtube.com/watch?v=N71qJgNw47Y
●私、あの「まぐまぐ」でメールマガジンを発行しております。
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