【新シリーズ】「オレは謝りたい」そんな卒業

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弥生3月。
たとえば東京大学が入学時期を秋口に変更したりすることはあっても、我が国日本では3月といえばやっぱり卒業シーズン。高校などは3月1日が卒業式というところも多く、それ以降から制服姿で手に花を持った学生さんをすでにチラホラ見ることができる。振り袖姿の女子大生などは中旬から下旬に多いのだろうか。
別れの寂しさもありながら、どの年代もそれを乗り越えての新しい出会いへ、清々しい笑顔を浮かべているのが毎年印象に残る。まあ、大学生などは卒業式後に飲みに行くことも多いのか、昼間の清々しさが夜にはベロベロになっているなんてのもよく目撃するのだが。いいなあ、若いって(笑)。

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ある私立小学校の卒業式風景(資料写真)
卒業――。
たとえばAKB48のメンバーがそのグループを辞めたり、「たばこを止めました」なんてことも“卒業”と言ったりするが、純粋に「学校を出ました」という意味では筆者は幼稚園、小学校、中学校、高校と4回の卒業を迎えている。自動車学校とかにも行っていないからこの4回で間違いない。
それぞれに感慨深いものがあるのだが、中でもいまだに“謝りたい”卒業がある。中学校、横浜市立吉田中学校での卒業である。
私立の小学校やら中学校を受験します、そんな向きは別だが、幼稚園や小学校の卒業はなすがままな感じである。ただし、こと中学校となると、大多数が大きな障害を乗り越えてからの卒業になる。
そう、高校などの「受験」だ。
自分の進みたい進路へ向けて勉強をし、受験という関門に立ち向かってからの卒業。それを乗り越えたからこそ喜びもひとしお、なのだろうが、当然ながら全員喜べるかわからないのが受験である。ホラ、言わずもがな、落ちちゃう場合があるからね。

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母校・横浜市立吉田中学校
「どこの高校を受けようか?」。それは自分の希望がいちばんだが、叶わぬ場合もやはりある。それを担任の先生と相談したりするわけだが、筆者が担任に希望の高校名を告げると「……倍率1.1倍なら勝負か……」と呟くように返ってきた。いいねえ“勝負”という語感が……そんな感想とともにいまも変わらぬギャンブラー気質、ハラを決めて出願状況をチェックするとズバリ倍率1.1倍。よしその勝負、乗った。
我が中学校から志望校への受験者数は筆者も含めて11人。おおすごいねえ、ご丁寧にひとり落ちる計算だ(笑)。そんなことを言いながら受験当日を迎え、手応えがあったんだかなかったんだか今はもう覚えていないから発表当日。

ハイ、11人中で私だけが落ちました。

いまも変わらぬその勝負弱さを発揮した筆者は、その場から逃亡を企てるも合格者10人にガッチリガードされて学校へ。道中当然のことながら合格者の喜びの声は皆無であった。そしてその日だけでなく、筆者の周囲は卒業の日までなんとなく沈んだ空気になっており、それを挽回すべく自虐ネタを振って上滑り……これもいまと変わらない。とほほ。

結局のところ、最後の最後まで「残念だったね……」が枕詞になってしまった中学校の卒業。この時期になるとときおり思い出す話なのだが、聞くところによると来年度から校名が横浜市立横浜吉田中学校に変わってしまうとか。これからも同じところに建ってはいるが、「もう謝れなくなっちゃったな……」という喪失感もふと思った。
これもまた、ある種の卒業か――。