離婚して、インド

私は「とまこ」という人を“見、損なっていた”のだろうか。

送られてくる『おしゃれパッカーとまこの世界を行く』の原稿の内容然り、それに添えられてくる「かき氷食べたいです、三つほど」などのオチャメなひとこと然り。たまにお目に掛かればそのキッチュな出で立ち、そして絶やされることのない笑顔で、自分のやりたいことをガンガン説明する様子然り。会って話すべく内容が仕事の条件の変更(詳しい内容はお察しください)で、こちらが頭を悩ませながらであっても、この人のそんな様子は変わらない。
こんなこともあった。
彼の11年3月11日の16時ごろ、大混乱のつぶやきが溢れかえるtwitterに 「‏@tomako_tabifeti」からの「ただいま香港到着。スイーツを満喫してきます〜」旨のつぶやきが登場し、私は慌てて「(おしゃれパッカー)部長、いま日本は大変なことになっていますぞ!」という返信をしたものである。
ことほど左様に、いつも元気で楽しくポジティブ、それでいて一種“不思議ちゃん”(失礼)。それが「とまこ」の本質なのであろうと勝手に思っていた。
本書『離婚して、インド』にしてみても、手にとって最初に飛び込む表紙の“笑顔で大口を開けてスイーツを喰らう”写真など、「とまこ」そのものではないか、そう思って読み始めたものである。

ところが。
7年連れ添った夫に別れを告げられ、「ぐっちゃん、ぐっちゃんなとこ、行きたい」とインドを目指して旅立った11年3月11日(なるほどそんな日)。インドに辿り着く前、香港・マカオから始まるさまざまな苦悩、そしてインドでのさまざまな出会い、さまざまな別れ、そして覚醒――これらが大好きな写真とともに、『圧倒的な正直さ』によって綴られている。
そう、『圧倒的な正直さ』。
おもしろいものを見た、かわいいものを見た、素晴らしい出会いがあった……そんな様子は多くの人がこれまで目にしてきた“とまこワールド”によって切り取られている。ただ、そんな経験と同時に去来する、ひとりになってしまった自分への想い――寂しい、悲しいという涙、そして新たな発見とともにやってくる別の涙、それらの存在もまた正直に伝えられる。“行間に滲む悲しさ”などではないこの真正直な感情の発露が、哀だけでなく、喜怒哀楽どれを取っても、読むものの心を締め付け続ける。

本書は、これまで誰も知らなかった「とまこ」の慟哭を伝えている。秘められた悲しみが、よりあの笑顔を輝かせる。それあたかも闇と光――
いや。
この人にそんな例えは似合わないかもしれない。こうも考えられよう。
『おしゃれパッカー部長』として文字と写真、そして絵を操る「とまこ」の、一心同体である「渡邊智子」さんという女性。そう、彼女の慟哭が、いつも元気で楽しくてポジティブで少し不思議な「とまこ」を創り出し、輝かせている――。うん、やはりこのほうがファンタジックでいい。

いずれにしろ、やはり私は「とまこ」を甘く見ていたようだ。

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作者名:とまこ
ジャンル:フォトエッセイ
出版:雷鳥社

離婚して、インド