名前の行方

6月の前半。いわゆるひとつの「交流戦」というお祭り期間の終盤、久しぶりにプロ野球の観戦に行ってきた……という話を書こうとしてちょっと踏みとどまった。
というのも「野球」も「ライブのうち」、という括りはいいとして、この連載は「呑む」をキーワードにしたお題が眼目。じつは僕は野球観戦中は「呑まない」主義なので、書いたものかどうしようか迷ったのだ。これはスタンドに陣取って球種や守備位置を見るのが趣味のひとつ、というのもあるけれど、先にも書いた「ライブを見る前と見ている間には呑まない」というのと同じで、眠くなっちゃうからです。
その昔、野球観戦をしながらビールを呑み続けて、後半は観戦してるんだか寝てるんだかよくわからなくなったことがあるし、それより何より内野で観戦していてファウルボールが飛んできたとき避けられなくないのがたいへん怖いのだ。
事実、学生時代に観戦した大学野球で、ビールに気がいって試合を観ていなかった女の子の頭にファウルホールが直撃、カツーン! と当たって跳ね返って女の子、うずくまったまま動けず……というのを見たこともあります。まぁそのあと戻ってきて観戦していたからダイジョブだったんでしょうけど、あれぁ痛そうだった。いずれにせよ危ないことに変わりはありません。
なにせ硬球っていうくらい。マジ固いですからね、打ち所が悪ければクワバラクワバラ……。でも「終われば必ず呑みに行く」だからまあいいか、と書き出すわけで……ともかく青空の下で野球を見るのってほんとうに楽しいですね。勝ち負けはともかく。
足を運んだのは千葉県・海浜幕張にありますQVCマリンフィールド。ごく一部にご存じの方もいらっしゃるかもしれませんが、ワタクシ実を申して長年の虎ファン。そういうことで球場名からもおわかりの通り「阪神vsロッテ」であります。
試合の方は「取って取られての打撃戦」、と言えなくもないんですが、内容はというと両チーム本塁打を含む15本を越える安打を放ちながら、拙攻・拙守で「6―6の引き分け」という、「痛み分け」というか「バカ試合」で「何やってんだか」と呆れる一方。
とはいえこういう乱打戦は見ていて飽きないものだから、久しぶりの生観戦はとても嬉しい気持ちになりました。告白しますが着いて早々、ビールを一杯だけいただきました。だって梅雨の中休みのデーゲーム、蒸し暑くてしょうがない日だったんですよ。駅からの道のりが遠くてねぇ。すいません。

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ところでこちらの球場名であるQVCマリンフィールド。ご案内の方も多かろうと思いますが、いわゆる「ネーミングライツ(命名権)」をQVCというテレビショッピングの会社が買ったもの、去年の春までは「千葉マリンスタジアム」でした。
このように「命名権」を売却している球場は他にもあります。挙げてみましょう。

・京セラドーム大阪(旧・大阪シティドーム)
・MAZDA Zoom―Zoomスタジアム(旧・広島市民球場)
・日本製紙クリネックススタジアム宮城(旧・宮城球場→フルキャストスタジアム宮城)
・福岡Yahoo! JAPANドーム(元福岡ドーム→ヤフーBBスタジアム)

これくらいでしょうか。これらは「公式フランチャイズ球場」なのでそれぞれがNPB(日本野球機構)所属チームのホームグラウンドとしての役割を担っていますが、このほかにも企業名のついた球場として、

・HARD OFF ECOスタジアム新潟
・ほっともっとフィールド神戸
(神戸総合運動公園)(元グリーンスタジアム神戸→スカイマークスタジアム→ほっともっと)

なんていう地方球場もあって公式戦が行なわれたりしています。まだありますよ。

・松山坊ちゃんスタジアム
・マドンナスタジアム
・倉敷マスカットスタジアム

は、夏目漱石や岡山県マスカット組合が買った……わけではないでしょうね。両方とも市営球場の名前を一般公募で決めたそうです。坊ちゃんスタジアムでは今年オールスター戦も開催されますね。

さて、この「命名権販売」は運動施設にとどまりませんで、有名なところではかの「渋谷公会堂」がいっとき「CCレモン・ホール」なんて名前になったこともあって、通称「渋公」の愛称で永年親しんできたロック・ファンからは「よせやい」という文句も上がったりしました。命名の期限が切れて元に戻ったときにはみんなで安堵(?)したものです。

他にもプロ野球の2軍の名前が売られた(オリックス2軍が「サーパス神戸」、西武2軍が「グッドウイル」に。いずれも現在は契約解除)こともありましたし、ごく最近ではオーナー自体が変わって横浜ベイスターズが横浜DeMAベイスターズになったりしました。面白いですね。でも調べてみて驚きました。いまでも「命名権..com」というサイトを見ると、方々で施設の命名権を入札制で売っています。こんなにたくさん売ってるなんて、とビックリしたというわけです。そうか。売れるんだな命名権。このコラムの命名権も売ろうかしら、なんてね。
「はいコチラオリックス・ブルーウエーブ・酔っぱライ部」とか「東京スカイツリー・酔っぱライ部」とか「エイベックス・酔っぱライ部」とか。売れないな。絶対。
それにしてもホントにこうちょくちょく名前が変わるとどれがどれだかわかんなくなっちゃう。ついていけないよなぁ。少なくとも数年は「名前を保持」するような契約約款にしてくれないとねぇ。


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さて、そんな馬鹿なことを考えながら野球の生観戦をした帰りも当然「呑みに行く」。バカ試合のこととて、13:00開始にもかかわらず4時間もかかって「規定により延長に入らず引き分け」で試合終了17:00。直後の電車は後楽帰りの乗客と相乗して混むに決まってる、と海浜幕張駅前のパブに入って試合についてのオダをあげながら生ビールをゴキュゴキュ。
2時間ほど滞在して駅に着いたら同じことを考えた連中がたくさんいて、車内の空気は深夜に新橋から乗ったかのごときアセトアルデヒド90%超。ネズミーランド帰りの少年少女よスマン、と謝りつつ帰った夜8:00。冷蔵庫をのぞいて見つけた鶏皮とモヤシで、なぜか球場では食べなかった「焼きそば」を夢見て作った「鶏皮のソース焼き」で仕上げのビールをゴキュ!
でまた次回。

【Panjaめも】
●こちらが『命名権.com。』見てると面白いです。
現在「広島市文化交流会館ホール」や「北区王子小劇場」などが命名権販売中

●これは試合中の「駄話」で話題に上った「オマやんの六甲おろし」。歌唱力抜群

●悔し紛れの「バックスクリーン3連発」。植草貞夫さんの名調子に涙