気になっているお店の前を通りかかり、中を覗くとすでにお客さんがいる――。
このようなケース、自分も単なる一客であれば躊躇なくドアを開けて入ればよい。そして思うがままに注文をしたり、買い物をすればいいわけだが、当コーナーの場合はちょっと違う。
裏話的なものになるが、実際に取材をしているときは営業時間の前や後がほとんどであり、取材をお願いする際も営業時間の前後、営業時間に入ってしまったら、中が覗けるお店の場合でお客さんがいないときだけドアを開ける。それ故、いつ通りかかってもお客さんがいるという人気店は、なかなかいろいろなタイミングが整わないこともある。
今回登場の『Bistro Bar Ku(ビストロ・バー・クー)』もそんな一店。店名からもお察しの通り、先日登場いただいた『Bistro Ku hanare』の土井希親さんが約10年前に初めて出したお店だが、お隣の『香港ロジ渋谷店』など飲食店が建ち並ぶ通りに面している入口を覗くと、いつもお客さんで溢れている。なかなかうかがえないなあ……と思っているうちに対面のビルの5階にある"離れ"に偶然にも辿り着き、そちらの登場を経て今回の『Bistro Bar Ku』に至った。記念すべき1号店である『Ku』から『hanare』という登場順が一般的のような気がするのだが、それにはこんな経緯があったのだ。
「確かにまずは『Ku』な気もしますよね(笑)」、そう迎えてくれたのは再登場となる土井さん。ご近所さんであるこの"母屋"、そして"離れ"だけでなく、道玄坂にも『Bistro Ku Dining』があって大忙しということで、「今回は『Ku』の店長をどうぞ」とだけ残して風のように去っていった。
ここから改めて迎えてくれたのは、『Bistro Bar Ku』の店長である成田武史さん。10年前に開店し、今も歴史を刻み続けるこのお店にやってきたのは2年前のことだとか。
「それまでは二子玉川の飲食店で働いており、縁あってこちらに参りました。それまでは桜丘はまったく知らない場所でしたね。で、おかげさまでお店も繁盛しているので、なかなかいろいろなお店も見て回れないのが寂しい限りでして……。ただ、桜も満開ですし、桜丘はこの時期がいいですよね。いちばん似合う季節だと思いますので、お花見をしながら『Ku』にやって来ていただければ嬉しいですね」
『hanare』はランチがやってますから、ランチの後にお花見して、ディナーは『Ku』というのが最高ですね……そんなふうに水を向けると、「いやいや、そこまで気を遣ってくれなくてけっこうです。こっちにだけ来てくれれば(笑)」と茶目っ気たっぷりに話す成田さん。もちろん冗談めかしてではあるが、位置付けは姉妹店という同士であっても時折ポッとライバル心に火が点く。
「最近は『Ku』と『hanare』を掛け持ちするというより、どちらか一方に定着したと思うって土井さんが言っていた? いやいやいや、そんなことないです(笑)。やっぱり『Ku』が先に満席になってしまって『hanare』をご案内するってことのほうが多いです、はい(笑)。お客さんの年齢層も『Ku』のほうが低いはずですよ。こちらは20歳から30歳代の女性が中心ですが、『hanare』は『あそびすと』の編集長さんくらいの方が……63歳? すみません、それは言いすぎました(笑)。あ、そうそう、オススメのワインで『hanare』はスゴイいい赤ワインを出してましたよね。ですからこちらは白ワインで負けない物を用意いたしましたよっ」
繰り返すように冗談めかしてではあるが、メラメラと『Ku』そして『hanare』について語る成田さん。こんな切磋琢磨がお互いを発展させていくのは間違いなく、そして『Ku』には個室や団体利用もできるフロアも2、3階にあるが、こんなトークが聴ける1階カウンターでのひとり飲みも悪くないと一客として思う。
成田さんの2年が加わっている『Bistro Bar Ku』の10年。その店内に足を踏み入れれば、入れ替わりも激しい桜丘でベテラン選手になり得る、そう思わせる雰囲気で溢れていた。
お邪魔いたしました。最後に土井さんと成田さんからの一言を。
「私が飲食店を始めたいと考えて、飲食店で10年働き、そしてこの『Bistro Bar Ku』をオープンして10年です。その間いろいろな飲食店に行きましたが、お金を持てるようになったことで行く店が変わったり、いろいろな経験ができました。そこで『自分が今やりたいのはこんなお店』と考えて、10年ので『hanare』など2軒を増やすことができました。次の10年も同じだと思います。いろいろなお店に行って、経験をして『自分がやりたいと感じたお店』を実現していく……そのために、これからも桜丘の『Bistro Ku hanare』、そしてこの『Bistro Bar Ku』を精一杯盛り上げて行きたいと思います」(土井さん)
「おかげさまで忙しい毎日を送っておりますが、桜丘のみなさんよりは遠征してきていただいているお客さんが多いのかな……とも感じるんです。桜丘は働いている人、学生さん、そして住んでいる人もいる場所。『あそびすと』の『Ku』のページをご覧いただいた桜丘のみなさん、パーティなどもできますのでぜひ一度いらしてください。お待ちしております」(成田さん)
Q・あなたにとって桜丘とは?
「"好きな渋谷"になりましたね」
こちら『Ku』は3階構成。1階のカウンター席では“Ku”ファミリーとのやりとりも肴になりそう
上階は貸し切りもできますよ。2階は半個室もあってデートシーンなどにも
3階にやってきました。バーカウンターフル活用のパーティとかって楽しそう
上階にはシックな階段で。ちなみにトイレは2階なので、誰でも一度は階段を上がります
お待ちかねのお料理ですよ! 前菜で白レバーのテリーヌをいただいてみましょう。なめらかレバーがバルサミコで際立ってますよ。どうだ800円!
こちら『Ku』のド定番、えびみそのクリームスパゲッティ。コースメニューにもちゃんとセットされているこのパスタ、海老の風味がクリームソースに合わないわけがない。950円ですよ
「向こう(笑)が赤のオススメなら、こっちは白のオススメですっ」と成田さんが出してきたのはニュージーランド産の『MUD HOUSE』。
「09年にNZで行なわれた『International Wine Competition』で1位に輝いたソーヴィニオンブラン種のワインです」
世界一がボトル4500円で飲めちゃう!
【今回の桜な人々】
Bistro Bar Ku
成田 武史さん
〒150-0031
東京都渋谷区桜丘町2-2(マップ)
ホームページ(ぐるなび)
http://r.gnavi.co.jp/g694500/