ドライヴ

20120328cpicm.jpg名もなき寡黙なドライバーを『きみに読む物語 』のライアン・ゴズリングが演じ、カンヌ国際映画祭で監督賞を受賞し、ローリングストーン誌やウォールストリートジャーナル等もこぞって高評価を叩き出した本作。にも関わらずオスカーの賞レースからは完全に無視され、そのことを不服に思ったラッセル・クロウがツイッターでライアンを賛辞するつぶやきを投稿するなど、ハリウッドの同業者からも高く評価される傑作だ。

20120328cpic1.jpg無言のままハンドルを握るドライバー(ライアン・ゴズリング)。昼は映画のカースタントマン、夜は犯罪者の逃亡を手助けする運転手という二つの顔を持つ無口な男だ。ある日、ドライバーは自宅アパートのエレベーターで人妻のアイリーン(キャリー・マリガン)を見かけ、一目で恋に落ちるが……。
今までは恋愛ドラマを中心にグッとくるイケメンを演じてきたライアン。本作の中軸も恋愛ではあるが、彼が演じてきた普通の男とは違い、本作では裏稼業と接点を持つ孤独な男を演じる。ライアン自ら監督に連絡を取り、そして出来上がったという本作では、狂人かと言っても過言ではないほど、今までのライアンとは別人のような面が炸裂する。「台詞で説明する映画」を毛嫌いしてきた私だが、本作での台詞は最小限に削ぎ落とされ、役者の表情、仕草、カメラワークがすべてを語る。映画中の映画ここにあり、なのだ。

また、最近では『SHAME―シェイム―』にも出演し、ディカプリオとの共演作『グレート・ギャツビー』も控えノリに乗っているキャリー・マリガン。原作ではラテン系だった設定のこの役を、監督は白人であるキャリーを見て一目で彼女に決めたという。彼女もまた『わたしを離さないで 』に代表されるように、童顔ながらも表情だけですべてを語る演技力には定評がある実力派だ。今年あたり何かしらブレイクしそうなオーラをビシバシと放っているあたり、今後も目が離せない。

車だけが友だちだったドライバーが見出した心の拠り所、アイリーン。傍から見たら小さな陽だまりでも、今まで日陰にいた彼にとってはそれが彼の世界のすべてとなったのだろう。いつの日も、誰にとっても、恋は人の人生を変えるのだ。

派手なカーアクションもさることながら、意表を突くストーリー展開もなかなかの本作。観賞後もずっと心に残り続ける重厚な質感の一品だ。


原作:ジェイムズ・サリス
監督:ニコラス・ウィンディング・レフン
脚本:ホセイン・アミニ
出演:ライアン・ゴズリング/キャリー・マリガン/アルバート・ブルックス/ブライアン・クランストン/クリスティナ・ヘンドリックス/ロン・パールマン/オスカー・アイザック
公開:3月31日(土)より、新宿バルト9他全国ロードショー
公式HP:drive-movie.jp
 

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