茶葉をたずねて三千里――フェズの街で路頭に迷う

モロッコの世界遺産、フェズ旧市街。

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まるで迷路!なフェズの街
この街の道は複雑怪奇に入り組んでおり、迷いやすい。おまけにどこも似たような街並みなので、旅人泣かせだ。そんななか地図を広げていると、地元の人が道案内をしてくれることがあるが、一見して親切に思えるその行為には裏があることに気がついた。

それは地図片手に、フェズを散策していた際の出来事だった。
路上で土産物を売っていた少年と話ついでに、ミントティーの茶葉を買いたいと言ったところ「じゃ、案内してあげる」と少年は店を放棄し、歩き始めた。
一瞬、先に案内しておいて後からガイド料を請求されるのでは、と警戒したがいざとなったら突っぱねようと考え、少年の後を追った。

路地裏を歩くこと10分。連れて行かれたのは地元の薬局、といった雰囲気の店だった。
薄暗い部屋の中には、乾燥した葉や根のような物が透明な瓶に入れられ、ところ狭しと並べられている。商品には値段がついていないため店員に交渉を試みたが、モロッコ有数の観光地だからだろうか。ほとんど値引きしてもらえない。少年に助けを求めてもどこ吹く風なので、お店を後にした。

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怪しげなスパイスマーケット
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さらに怪しげなフェズの薬局
少年にお礼を言い、ここでお別れのつもりが「次はどこに行く? 何がほしい?」と、いつまでも追いすがってくる。私の手を引き、やたらと値段が張るレストランやお土産屋に連れて行こうとする。案内してもらいながら勝手な話だが、迷路のような街で勝手知ったる人にいつまでもつきまとわれるのは、少々怖い。無視をしてもラチが明かないので終いには大声を上げ、退散していただいた。

散策を終え、先程の少年に会わないよう裏道を歩いていると、誰かが追いかけてきた。
「ジャパニーズ! ミントティー、君の言い値で売るよ!」
振り向くと先程の店員が息を切らせていた。お店に戻ると 「さっきはごめん。君は少年に案内されて来ただろう? その場合、僕は彼にコミッションを払う必要がある。君の言い値から彼の取り分を払うと赤字になるので、どうしてもあの値段で売れなかった。この店は通りから離れているから、ときおり助けてもらっているんだ」などと、聞いてもいないのに事情を明かしてくれた。

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"コミッションなし"のミントティー
なるほど、コミッション目的の道案内だったのか。道理でしつこかったわけだ。
結果的に茶葉を安く買えて満足したものの、値札がきちんとついていることや人の親切にさほど裏がないという点において、日本が良いと思えた買い物だった。