少しばかり聞きかじりで「野生のきのこは滅多なことじゃ採って食べちゃあ、危険だよ」ってな知ったかぶりしていても、「きのこといえば、スーパーでパックになって売っているものしか知らない」というのが大概ではないだろうか。
エッセイ「きのこの迷宮」は「きのこ」という存在に対する考え方を一変させてくれる。なんてシュールで美しく、愉快で楽しく、危険と魅力に溢れ、だからこそ興味深く奥深いか。
著者はきのこに対する深い愛情に溢れ、読み進めるうちに気が付けば著者の「きのこ愛しや」心情にすっかり感作してしまったと気づく。独特なお茶目センスを楽しみながら、時にあははと大笑いして読み終われば、いっぱしに「きのこ」について語りたくなったりする。
エッセイを読む傍らには必ず「きのこの絵本」を置いておきたい。きのこ画家として、はたまたきのこ仙人として知る人ぞ知る著者。
「きのこなんかばかり描いてると、儲からなくて仙人みたいに霞か雲を食らって生きる羽目になる」と言われながらも25年以上もきのこを求めて山に分け入り、林に森にでかけていって、実際に目にして写し描いてきた作品の数々には目を見張るばかり。見る者をまさかの地に誘う臨場感と新鮮な感動が伝わってくる。
図鑑のように微細であり、抽象画のようにシュールで、いわば大人の絵本のようでもある。もちろん表記・表現は丁寧でわかりやすいから、学童はもとより、まだ文字の読めない小さな子供でも楽しめる。
お子さんやお孫さんを膝に入れて、「きのこの絵本」を広げながら「きのこの迷宮」で仕入れたきのこ薀蓄を噛み砕いて伝え語りすれば、パパ・ママ、ジー・バーの株は間違いなく上がること請け合い!
※著者・小林路子さん登場の「VIVA asobist」はこちら
作者名:小林 路子
ジャンル:エッセイ/絵本
出版:光文社/ハッピーオウル社