「本日は女性とデート」てな向きには、葉巻が置いてあるシックなオーセンティックより、少しおしゃれなバーはいかがか。
「Shot Bar XANADU(ザナドゥ)」。JR五反田駅から200mほど歩いた桜田通り沿いにある。五反田の駅周辺ではもっとも古いショットバーとして有名だ。
ビルの地下1階にあるので、階段を下りて扉を開けると、ブルーの淡い光で満ちている空間が迎えてくれる。一気に非日常の世界に飛び込んだ感じ。ブルーの照明は天井ではなく、なんとバーカウンターの中にあるのだ。海をイメージしたという店内デザインも相まって、まさに水中にいるような雰囲気を醸し出す。まさに、デートにうってつけのバーではないか。
XANADUのマスターは戸澤さん。21歳のころXANADUに入り、以来13年以上カウンターに立っている。いつ来ても同じバーテンダーが迎えてくれるというのは、客側としても安心できるところ。オーセンティックスタイルと言うよりも、リキュールを充実させたカジュアリティーがコンセプト。ウィスキーはスタンダードなラインナップとはいえ、スペイサイドモルトからアイラモルトまで本数は揃っているので、物足りなさを感じさせることはない。
XANADUでの1杯目は決まっている。モスコミュールだ。モスコミュールはウォッカとライムジュース、ジンジャーエールを使ったカクテルで、バーはもちろん多くの居酒屋で飲めるのでごぞんじの人も多いだろう。しかし、XANADUのモスコミュールはひと味違う。ショウガを煮詰めたジンジャーコンクを作り、それとウォッカをミックス。そして、ソーダでアップするのだ。ウォッカもショウガに漬け込んでいるので、味はしっかり過ぎるほど付いている。アルコール度数は15度前後と低いものの、食後のデザート感覚で、かつバータイムの口切りにぴったりのカクテルなのだ。1杯880円なり。
女性にはフルーツのカクテルがオススメ。XANADUにはいつも季節にあったフルーツが用意されており、お好みのスタイルでカクテルにしてくれる。氷と一緒にブレンダーにかけてフローズンにする際も、氷を少なめにして水っぽくしないように心がけている。写真のカクテルはスイカのカクテル。サイコロ状にカットして種をすべて取り、ブレンダーにかけている。グラスの半分に塩を付けているので、スイカのソルティードックという趣。素晴らしい味に仕上がっている。1200円。他の季節でも、キウイやバナナは常備している。
ちなみに、XANADUという店名の意味は理想郷とか桃源郷という意味。映画「市民ケーン」の中で大富豪のケーンが建てた豪邸の名前から取った。
店内はオープン当初からそれほど変わっておらず、モルトブームのころに戸澤さんが棚を付けたくらい。バーカーウンターの中にブルーのプラスチック板と蛍光灯を入れ、光らせているのも当時からだ。ガラスは4ブロックに分かれているものの、分厚い。カーブが付いているので、もちろん特注品だ。筆者は見たことがないが、グラスを置いた時などにヒビが入ることがあるらしい。交換が大変そうだ。
XANADUの営業時間は19時から朝4時半まで。4時がLO(ラストオーダー)となっている。以前はもう30分早かったが、始発までいたいという客の要望に応えた。たしかに電車で帰る人にはうれしいところ。しかし、朝まで開いているバーで遅くまで飲んでいると、3件目、4件目の人たちが来て、あまり飲まずに寝てしまうことがある。バーテンダーは特に何も言わないことが多いが、傍目にも迷惑。シックなバーで寝ることだけは避けていただきたい。
さて、そろそろ強いお酒が飲みたいところ。シングルモルトでは、マッカランなどスペイサイド地方の飲みやすいタイプか、アイラ島の癖のあるタイプが多く出る。ちょっとがつんとしたモノが飲みたいので、ラフロイグを注文。もちろんストレートで。女性のお代わりにおすすめのリキュールを訊いたところ、戸澤さんが出してきたのは見たことのないパッションフルーツのお酒。小笠原の特産品だという。では、これを使ってロングカクテルを作ってもらおう。
今日も素晴らしい時間が始まった。ラフロイグのピート香を楽しみながら、女性の話に耳を傾ける。あまり、お酒に集中しすぎると女性に怒られるのでほどほどに。とはいえ、バックバーに見たことがないお酒の瓶があって目を引かれてしまう。ラフロイグがなくなる前に話が途切れれば、戸澤さんに質問できるのだが。
ショットバー XANADU
住所:〒141-0022 東京都品川区東五反田1丁目11-12 大力ビルB1
営業時間:19:00〜翌4:30
TEL:03-3441-1359