新宿で食事をした後に、カクテルを飲みたくなったので「Bar Rouge」へ向かう。新宿3丁目の靖国通り沿いなので、東口もしくは歌舞伎町から移動するとよい。宵の口の新宿は集まりだした人、人の熱気でヒートアップしはじめている。しかし、階段を下りてBar Rougeの扉を開ければ、そんな喧噪をよそに静かで落ち着いた照明の空間が、ジャズとともに迎えてくれる。
Bar Rougeは15年の歴史を持つオーセンティックなバーだ。10席のカウンターとカッシーナの椅子をチョイスしたテーブル席、それに半個室が二つと店内は広い。
店長の三須さんは14年のキャリアを持つバーテンダーで、Bar Rougeに入って9年が経つ。20代に歌舞伎町にある知り合いのバーで働き始めたのがスタートだとか。バックバーに並ぶ500〜600本のお酒やワイン、BGMにいたるまで三須さんがチョイスしている。幅広く対応できるような品揃えを心がけているという。
いつも通りカウンターに座る。1杯目はデザート代わり、そして今宵のスタートの口火としてモヒートを注文した。農業大賞を受賞したミントを贅沢に使う。たっぷりのスペアミントとペッパーミントをミックスし、バースプーンの背中で穏やかに押す感じでエキスを出す。ラムはハバナクラブの3年で、7年物でコクを足す。レモンとシュガーシロップを入れて、ペリエでアップ。
Bar Rougeのモヒートは甘さが控えめだが、苦みがない。フレッシュな味わいが広がり、のどごしも爽やかなので女性にもお勧めだ。特段のどが渇いていなくとも、ハイペースで飲みきってしまう。最高の一杯。価格は1300円也。
ウィスキーの品揃えには思わず目を見張る。シングルモルトで約120本を揃えており、レアものやハイヴィンテージものも多い。お勧めを尋ねたところ、エディションスピリッツ社の「ティーニニック28年」が出てきた。「エディションスピリッツ」社は、高い人気を誇るボトラー「ダグラスレイン」社の社長スチュアート・レインの息子が20代という若さで立ち上げた新進気鋭の企業。新世代のボトラーだが、すでに品質の高いモルトを提供していることで注目を集めている。
バランスのよさを感じさせる10年物に比し、1982年に樽詰めされた28年物の複雑な味わいは感動的でさえある。年代にしては力強く、それでいて口当たりは柔らかく、華やかな後味が楽しめる。
店内の壁を飾るいくつかアート作品はどれも写真家・芸術家のアラーキーこと荒木経惟氏のもの。実は、Bar Rougeの店名とロゴをデザインしたのが荒木氏で、店にもよく姿を見せるそうだ。ちょくちょく通ってはいるのだが、まだ一度もお目にかかったためしがないのが残念。さて、どんなオーラを纏っているのか興味がある。
ちなみに、老舗のバーでは、有名人に遭うことが多い。馴れ馴れしく声をかけたり、勝手にカメラを向けたりしないように、というのは常識。そこは大人の社交場なのだから、あくまでも静かに対応したい。
まだ早い時間なのに、ティーニニックを空けるころには、まったりとしたバーの時間に漬かりきって、精神が蕩け始めてしまう。バカラのグラスで旨い酒に舌鼓をうち、シガーの煙をくゆらせながら、ときどき三須さんとお酒の話題で盛り上がる。次は気になっているアードベッグのヴィンテージもののボトルにするか。至福の宵は更けていく。
BAR Rouge
住所:〒160-0022 東京都新宿区新宿3-20-6 FSビル B1
営業時間:18:00〜翌4:00
TEL:03-3354-7688