ウィンターズ・ボーン

20111025cpicm.jpg わずか17歳で一家の大黒柱の役を担っているひとりの少女。そこがアメリカであることすら忘れてしまうほどの寂れた山奥で、幼い弟と妹、そして心を病んだ母親を守りながら生き抜くその姿は、各国の映画賞46部門受賞、139部門ノミネートの快挙を果たし、サンダンス映画祭ではグランプリと脚本賞の二冠を果たした。少女役のジェニファー・ローレンスが『X-MEN:ファースト・ジェネレーション』にも出演するハリウッドスターである点を差し引いても、十二分に見応えのあるヒューマン・ドラマだ。

20111025cpic1.jpg ミズーリ州の山脈に住む少女、リー(ジェニファー・ローレンス)。ドラッグ・ディーラーだった父親は長らく行方不明で、母親は精神を病んでおり、可愛い弟と妹はまだ幼い。その歳にしてまるで母親のようにすべての家事をこなしながら日々を送っていたが、家族を心から愛している少女は幸せだった。そんなある日、前触れもなくやってきた地元の保安官から絶望的な事実を聞かされ……。

電化製品に囲まれて不自由のない暮らしをしていると、「生活する」こと以外に様々なこともできるし、逆に不満が噴出する余裕もできてくる。リーたちはそれとはまったく真逆で「生活する」ことだけで精一杯だが、だからこそ家族で助け合い、それぞれの絆も強い。
あの歳であそこまでの環境にあったなら、私なら音を上げているところだが、リーはそんな素振りはおくびにも出さず、それどころか高貴な精神性をも保っている。透明なまなざしを持つジェニファーだからこそ醸し出せただろうその厳かな雰囲気は、身なりはあんなに貧しいのに、まるで女神のように後光さえ見えるようだ。

リーを取り巻く環境、降りかかる災難、そして手にした奇跡。願っていただろうその目的は、心から欲しかったであろうこと、そしてその実、心のどこかでは決して知りたくなかったであろうこと。
リーが手にしたそれは地獄でもあり天国でもあり……貧しい中にも幸せがあり、正しさの裏に邪悪が棲み、暴力の奥に愛が潜み……すべての物事には明と暗とが表裏一体であるというこの世の真実を悟った瞬間でもあったのだろう。



監督:デブラ・グラニック
脚本:デブラ・グラニック/アン・ロッセリーニ
出演:ジェニファー・ローレンス/ジョン・ホークス/デイル・ディッキー/ギャレット・ディラハント
配給:ブロードメディア・スタジオ
公開:10月29日(土)よりTOHOシネマズ シャンテ他全国ロードショー
公式HP:www.wintersbone.jp

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