お手軽?「安い、近い、”長い”」な電車旅――こんな電車の乗り方その2

先週に続き、JRグループの鉄道を利用してのオトクかもしれない旅のおはなし。

鉄道の運賃というのは、原則として利用した分の営業距離数で計算される。たとえば新幹線を利用しての東京→新大阪は552.6キロで8510円(運賃のみ)、といった案配である。
では、それを踏まえて問題です。
問・渋谷駅から原宿駅まで、山手線の外回りと内回りを使っての運賃はそれぞれいくらでしょう?
ちなみに、外回りでは原宿は渋谷の隣で営業距離1.2キロ、内回りでは27駅後の33.3キロである。



答・どちらも130円

これ、当たり前のようだが当たり前の話ではない。運賃は“原則的”に乗車した営業距離で決まるので、この130円という運賃はあくまで例外措置なのである。
この例外は『大都市近郊区間』という名称で、「東京・大阪・福岡・新潟」にそれぞれ設けられており、この区間内であれば「1日の有効期間内でどれだけ長い距離で乗車しても、乗車駅Aと降車駅Bの最短距離の運賃でかまわない」とされている。ちなみに下の路線図が「東京近郊区間」である(その他のエリアはこのリンクをご参照ください)。 rosenzu_s.jpg
東京近郊区間(画像参照:JR東日本HP)
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先の渋谷→原宿の場合、仮に内回りで27駅を辿っても、外回りの1駅と同じ130円でOK、ということである。別のルートを上げれば、たとえば東京から八王子に向かうのに中央線一本だけでなく、山手線で新宿→中央線で八王子、このルートを使っても運賃は同じ780円だ。
ただしこれは、引き返したり以前と同じルートに入ってはならず、いわゆる“一筆書き”でなければならない。渋谷→原宿だと、2周目に入ったらいったん原宿で旅行終了(=切符が回収される)がルールとなり、東京近郊ならば横須賀線や久留里線など“ここから先は行き止まり”となる駅に入った場合も下車駅で旅行終了である。

さて、このルールを利用すると、「ヒマさえあればいつまででも最低運賃で電車に乗っていられる」という小旅行が可能だ。大都市近郊エリア内で、一筆書きで隣の駅を逆側から目指して行くのである。ちなみに筆者は住んでいた根岸から隣の山手まで130円の切符を買って勇躍、山手駅を以下のように目指した。どうか上の路線図にて一筆書きなのをご確認いただきたい。
根岸線で大船→東海道線で茅ヶ崎→相模線で橋本→横浜線で八王子→八高線で高麗川→川越線で大宮→京浜東北線で山手
いつもなら3分で到着する山手に6時間ほど掛けて到着した。「そこになにがあるのか」という疑問にはお答えしかねるが(笑)、いつもと違う電車や車窓風景、地方のホームでの電車待ちなどの体験もまた一興ではないだろうか。ないかもしれません。

電車に乗るのが好き、いわゆる“乗り鉄”への旅のご提案でございました。
最後に、この大都市近郊乗車を数時間していると、切符を入れても自動改札が開かない場合がある。その際は有人窓口でルートを正直に告げれば問題ない。おそらく説明の途中で「ああ、もう行っていいですよ……」と半ば呆れ顔で通してくれるはずだ(笑)。