『絵本マボロシの鳥』(講談社)の出版会見が5月18日(水)に都内で行なわれ、原作・文の爆笑問題・太田光と影絵作家の藤城清治が制作秘話を語った。
まずはご挨拶からお願いします。
藤代:僕は宮沢賢治とかアンデルセンとか童話の挿絵を描いてきたんだけど、最近はメルヘンの限界を感じていた。日本の風景とか実際の自然を描いたほうがいいんじゃないかって思っていた。そんな時にこの作品に出会い、僕はこういうものを描きたかったんじゃないかって思った。
時代や場所の設定がわからない、メルヘンだったり現実だったり、日本だったり外国だったりと、なんともいえない形や顔を写楽みたいに描きたかった。現代写楽を描くのは自分なんじゃないかって、闇の中から光りを放つ“マボロシ鳥”……光と影は僕の象徴だから、僕が描かないといけない本だと思った。
太田:(テレながら)先生の話をすべて書いておいて下さい(笑)。僕の感想で“行”を埋めるのがもったいないです。
幼いころの最初の記憶は母が読んでくれた絵本の『ケロヨン』。僕の中でモノを作る根底にあるのが先生が描くファンタジーの世界なんです。僕の本っていうのは“太田光”がうるさすぎる。理屈が多いってこと。太田の顔がチラチラ浮かんで読んでられないって評判が多くて、それでヘコんでたりもしました。絵本になったときにいい感じで僕が引っ込んで素晴らしい作品になり、僕のやりたかったことが完成したんだなって、そんな感じがしました。僕にとっては歴史上の人物のはずの“藤城清治”が実在するって思ってなかった(笑)。そんな人が僕の書いた文章を絵にしてくれるっていう……いまだに実感が湧いてこないっていうか……なに話してるのかよくわかんない(笑)。今日の会見が沢尻(エリカ)のXデーとかぶらなくてよかったなって、それぐらい感激&感動しています(笑)
小説から絵本になったことで、どういった方に読んでいただきたいですか?
太田:僕の本はもともと子どもが読んでもわかるようにしたかったけど、こういう性格なのでとっつきにくいところがあったかもしれない。これが伝わらないのは自分の技術不足だって思ってたけど、先生の絵を見た時に、これは読者のインマジネーション不足だって思いましたね(笑)。だから、僕の本がわからないのは読者がダメなんだって(笑)。……こういうこというから、また怒られちゃうんだよね。タレントや芸人が本を書くたびに酷評されますが、僕はそういうことに違和感を感じていて、どんな表現でもやっぱり、許されるんだっていうことを先生に教えていただいた。今回は絵本のわりに僕の文章が多いんです。もうちょっと削ったらって思ったら、先生が「太田君のあの脱線する文章がいいんだ」って言われ、とっても自信につながった。
藤代:絵の中から呼吸が感じられるような、血が通っている、人の心を揺り動かす、そういったことを若い人には、見るというより感じてもらいたい作品ですね。
お気に入りの絵、好きな一枚または驚きの一枚、こちらを教えてください。
太田:一枚選ぶのは難しい……。でも、“マボロシの鳥”がどんな鳥になるんだろうって思ったことと、オリオン劇場がどんな風に描かれるのかってことがありました。二枚目の群衆がワァーっと押し寄せるあの絵を見た時には鳥肌がたって、自分が“マボロシの鳥”になった(笑)。
この作品を通して伝えたかったことは?
太田:夢中に作品を書いて書き終わって手を離れたら後は世間の評価。本屋大賞も直木賞もノミネートさえされなかった(笑)。先生が絵本にしてくださって自分から離れた作品が絵になって帰ってきたっていう………えっと、質問なんだっけ?(笑)
……そうそう、どこかで自分が発したことは誰かがキャッチしてくれて、そこでつながることができる。人と人、人と地球、人と時代そういったつながる事で化学反応をおこしていく。これがいちばん伝えたかったことです。
憧れていたり尊敬している人の前では終始、恐縮気味になるのが実は太田さんのいいところ。そんな日は毒舌もやや控えめになりまして、“歴史上の人物”藤代氏に描いてもらって嬉しいやら恥ずかしいやらが前面に出ておりました(笑)。
「奇跡のコラボレーション」(本書帯より)のこの一冊、原作を読んだ人も読んでいない人も、ぜひどうぞ。