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あらゆる場面での様々な選択の積み重ねから、我々の人生は出来上がっていく。あの時あの選択をしていたら、していなかったら、あの言葉を発していたら、いなかったら……。
『トト・ザ・ヒーロー』、『八日目』の名匠ジャコ・ヴァン・ドルマル監督が、13年もの歳月と50億円の総製作費をかけて作り上げた壮大なスケールの本作。科学の発達により誰も死ぬことのなくなった世界で、ただ一人、最後の"死ぬ"人間となった主人公の人生を回想しながら、色とりどりの花弁のように複数の「たられば」の世界が展開していく。

2092年。118歳の最高齢で最後の"死ぬ"人間であるニモは、やがて訪れるであろう死を目前としながら病院での日々を過ごしている。だが、誰も彼の過去を知らないばかりか、彼自身も高齢のためか過去をまったく思い出せない。記者の質問に自身の人生を振り返るニモだったが、その答えは何パターンにも及び、どれが真実なのかは一向にわからなかった……。

幼いころの両親の離婚により、父親のもとで暮らすかそれとも母親について家を出るか……という究極の選択を迫られるニモ。その選択の結果、赤い服、青い服、黄色い服の女性らとどのような人生を歩んでいくのか。そんなパラレルワールドにも似た世界がニモの心の中でいくつもいくつも展開していく。
人生とは可能性の連続であると同時に、「ああすれば良かった、こうすれば良かった」と後悔する可能性も同じ数だけ孕んでいる。ニモが見る複数のニモの人生は、同一人物とは思えないほどの異なりを見せる……たったひとつの選択で、こうも人生は変わるのだ、これを観ているあなたとて例外ではない……と言わんばかりに。

バタフライ効果や宇宙大収縮といった理論も組み込み、まさに壮大で幻想的な世界を「小さな一個人の人生において」表現することに成功したといえる本作。大切な誰かと一緒に観たならば、鑑賞後にたくさんのことを語り合えること必至の逸品。