フルCG全盛のこの時代。ハリウッドでは通常100億円単位の予算を投じるところを本作では6?7億円に抑え、台風シーンなどは実際に台風に見舞われた際にロケするなど、あえて手作り感満載に仕上がっているディザスター・ムービーだ。
地球温暖化の影響で発生した強力な台風、“藍鯨(あいげい)”。その動きは不安定で、進路予測もままならない。市民を非難させた後に方向がそれれば、多大な経済的損失が生じる。だが「人命は何にも増して尊いものだ」と、市長は市民の避難を決断する……。
貧富の差が激しいといわれる中国。だがそれはあるところにはあるわけで、中国映画にしては巨額を投じて完成と相成ったのが本作。昨今は日本に来る中国観光客のおかげで日本経済は潤っているらしく、家電店や百貨店、そして今や日本の観光地のメッカとなった秋葉原にも中国語を話せる店員が常駐し、看板も中国語で併記されている。その中国パワーが映画としても日本に上陸し、単館でもレイトショー上映でもなく、全国順次ロードショーとして展開される。観光客の中国旋風を日本の映画界にも巻き起こすかのように、だ。
確かに台風描写に関しては予算の大半を投じてられているが、本作の主軸はイケメン市長。“越後製菓”の高橋英樹ばりの王道美形中年が、立派な名言をこれでもかこれでもかと口にし、雨ニモマケズ風ニモマケズ現場で体を張って一般市民を守る。かつて孔子、老子、荘子といった諸子百家を生み出した中国に、今もこのような人格者がこの国にいるとでも言いたいのだろうか。ユニコーンや妖精のように非リアル感だけが前面に押し出されているこのキャラ設定だが、本当にこんな人が実在するのなら、パクリ大国という不名誉な汚名を返上するためにぜひとも奮闘してほしいものである。
だがそんな市長が大真面目にいろんな場面で張り切り、市長を人格者に見せようと過剰なまでの演出が施されているから、思わぬところで大爆笑を禁じえない。また、特殊効果も一昔前のゴジラやウルトラマンを見るようで、その味のあるチープさは好きな人にはツボだろう。ラスト近くには度肝を抜くあるモノも現れ、ぃゃぁ、中国って何でもアリだな……と感心さえしてしまう。
あまり映画にBだのCだのというレッテル貼りをするのは好きではない。だが本作はB級映画の歴史に燦然と輝く傑作となることは間違いないので、マニアを自負するなら決して逃してはいけない。ド迫力の映像は、ぜひとも劇場で体感いただきたい。
超強台風(DVD)
監督:フォン・シャオニン
脚本:フォン・シャオニン
出演:ウー・ガン /ソン・シャオイン /リウ・シャオウェイ
配給:ブロードメディア・スタジオ
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.super-typhoon.com/