恋愛戯曲 私と恋におちてください。

私が初めて観た鴻上尚史の舞台は『天使は瞳を閉じて』だった。
あれから結構な年月が経った気がするが、今回は自身の舞台を自らメガホンを取って映画化したラブコメディー。
果たして映画は舞台を越えられたか!

1行も書けなくなった女性脚本家・谷山真由美(深田恭子)。
ダメ社員のレッテルを貼られたTVプロデューサー・向井正也(椎名桔平)。
人生停滞中の冴えない二人が、TV局の運命をかけたスペジャルドラマを作ることに――
「谷山先生にシナリオを書いてもらうためなら、なんでもします」
「じゃあ、私と恋に落ちて」
全盛期に“恋愛ドラマの女王”と称えられた谷山は、実は自分の実体験をネタに書いて来た。そんな谷山からの、まさかの<強制恋愛>で始まったふたりの関係。崖っぷちから羽ばたいて、恋も仕事も敗者復活できるのか……?
しかしまあ、スランプの作家……結構ありがちな話だが、クリエーターには身につまされるお話です(笑)。

さて、この映画のいちばんのみどころは、なんと言っても物語がみっつの階層になって展開する点だ。
第一階層は現実の世界(映画の世界)
第二階層は脚本の中の世界(映画の中のテレビドラマの世界)
第三階層は脚本の中の芝居の世界(テレビドラマの中の舞台の世界)
……わかりづらいですか? わかりづらいですよね?、なのでぜひ、映画館でご確認を。第一階層の深田恭子は、先にも書いたとおり人気作家。それにしても第一階層の深田恭子、ストライクど真ん中です! この“深キョン”を観るだけでもこの映画を観る価値ありだなと感じる私です!! あ、失礼、映画の本筋とはちょっと離れちゃってますが(笑)。
第二階層の地味な主婦役は、女優オーラを一切封印した見事な演技。実際、撮影中のロケでは通行人が誰も気づかなかったとか。そして第三階層は一転して女優オーラ全開の舞台女優。ま、ヤリすぎ感もありますが、そこはコメディーですしね。この“3人の深田恭子”の登場は、女優としての成長ぶりがうかがえる。まさに新境地と言えましょう。
そこに、絡んでくるのはコミカルな役柄は初挑戦の椎名桔平。みごとに3タイプの深田恭子を受け止めていたのは、さすがは演技派の面目躍如。
さらにこのふたりに負けないくらいの印象を残すのが、ベテラン勢。まず、制作局ドラマ部長の中川康博を演じる井上順。この人最近、いやらしい偉い人をやらせたら天下一品なのだ。昔は人情的なイイ人役が多かったけどね……(『俺んちものがたり!』とか知らない?)。今回もいやらしさ全開! いい味だしてる?!!
そしてもうひとり、すっかり大人になった清水美沙。ずいぶん前から大人ですかね? 編成部長の先島昭子役、アラフォーの貫禄、熟女パワー全開の演技です。

最後に映画を観終わった感想は、原作本を読んでから映画を観たら?
そんな感じです。第三舞台万歳!!
しかし、舞台を観たことがある人でも、“深キョン”目当てでこの映画を観る価値ありだなと私は思います。
本当に可愛いのですよ、はい(笑)。

恋愛戯曲 私と恋におちてください。 初回限定生産版(DVD)
恋愛戯曲(単行本)
原作:鴻上尚史
監督:鴻上尚史
脚本:鴻上尚史
出演:深田恭子 /椎名桔平 /塚本高史/中村雅俊/清水美沙/西村雅彦/井上順
配給:ショウゲート
ジャンル:邦画
公式サイト:http://koiochi-movie.jp/

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