ザ・ウォーカー

20100416140936picm.jpg 全米で『アバター』を抜き興収第1位(初日金曜日)の大ヒット作『ザ・ウォーカー』。
世紀末サスペンス・アクションの代表作、ヒューズ兄弟の映画史に残る代表作となる作品だ。

大規模な戦争によりすべてを失い、焼け果てた大地と崩れ落ちたビル。無法地帯となった世界にわずかに生き残る人々には、ひとかけらの希望もない。イーライ(デンゼル・ワシントン)は、世界でたった1冊だけ残る本を運び、西へ向かう旅を30年続けている。その本を探し続けるもう一人の男カーネギー(ゲイリー・オールドマン)。世界の運命を握るその1冊をめぐり、壮絶な争いが始まる。
人は人として尊厳を持って生きていくために何が必要か? 無法地帯となった世界を救うために必要なモノとは? また、独裁者にとって必要なモノとは? すべての謎が解き明かされたときの感動は、日本人である私にも感じることが出来た。両名優による、アクションシーンでの対決、そして演技力“対決”からも目が離せない。

20100416140936pic1.jpg ところで、ゲイリー・オールドマンと言えば、近年では『ハリー・ポッター』シリーズのシリウス・ブラック、『ダークナイト』でのゴードンが有名ではあるが、私にとっては、『シド・アンド・ナンシー』での本物と見間違うほどのシド・ヴィシャス役が鮮烈な役者である。公開当時、ロスでポスターを買ってしまったほどである。
また、私的には雑貨屋の技術者役であるトム・ウェイツ、特別出演のマルコム・マクダウェル(『時計じかけのオレンジ』)が嬉しい。私にとってトム・ウェイツといえば、ジム・ジャームッシュ監督の『ダウン・バイ・ロー』(シンガーソングライター役で出演)だが、最近はテレビドラマ『不毛地帯』のエンディング・テーマ『トム・トラバーツ・ブルース』でシンガーとしてもおなじみである。
その他、クローディア役のジェニファー・ビールス(「フラッシュダンス」以降の代表作になるのではないか)、ソラーラ役のミラ・クニス(今後、活躍が期待されそう)ら、脇を固める芸達者たちにも注目だ。

最後に映像の美しさにも触れないわけにはいかない。
レンブラントの絵画を彷彿させる光と影を巧みに使った映像は幻想的で、随所に見られる“前面暗部、後面明部”といった逆光のシーンが荒廃した近未来の雰囲気を見事に表現していた。また、画面構成もデザインセンスに溢れ、アクション映画でありながらとても美しく仕上がっている。撮影後に色調整が出来るハード・ディスクへ映像を直接録画するREDデジタル・シネマカメラが使われていることが、この見事な質感を生んだのであろう。

アクションシーンも格闘、銃撃戦、カーチェイスと、これまでにないスタイリッシュな表現がされていて見応え充分。この作品の監督であるヒューズ兄弟が実写版『AKIRA』の監督と噂されていることも納得出来る。ぜひ、実現していただきたい。

ザ・ウォーカー(Blu-ray)
監督:アルバート・ヒューズ/アレン・ヒューズ
脚本:ゲイリー・ウィッタ
出演:デンゼル・ワシントン /ゲイリー・オールドマン /ミラ・クニス/ジェニファー・ビールス/トム・ウェイツ
配給:角川映画/松竹
ジャンル:洋画
公式サイト:http://www.thewalker.jp/

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