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<彼方のやかまし村>
やっとたどり着いたそこは、何と言ったら良いのでしょう。広く開けた向こうにナチュラルでモダンな、不思議で美しい建物(ここはダイニングでした)が建ち、その向こうには湖がキラキラと輝いています。ここオデスホにあるURNATURは森の中にオーナーがコツコツと作り上げたコテージが点在する宿です。
宿泊するスペースに電気は無く、ランプとろうそくの生活。私達はランプの扱い方から習わないといけません。隣のコテージとも離れていて、夜はランプか懐中電灯の灯りを頼りに一生懸命歩く。(¥100SHOPのREDの明るかったこと!)それぞれの入口にはカンテラを下げる釣鐘(門灯ということでしょうか)と斧があります。これは暖炉の薪割り用。屋根には草と言うか木になりそうな位の植物がボーボーに生えています。
部屋は清潔で可愛く出来ています。テキスタイルデザイナーでもある奥さんのUlrikaさんデザインのものが、あちらこちらに置かれてナチュラルですが豊かなお部屋です。自然の中にあるナチュラルな宿はドイツにもありますが、ここまで清潔で美しい所は無いと引率のガビさんは言っていました。そうかぁ、こちらでもここまでの宿は稀有なんだ・・・部屋は1つずつ違うので、ここでもガビさんは部屋割に頭を悩ましたことでしょう。”好きな部屋へ”なんて言おうものなら本当に大変なことになりそう。
特にWedding Three Houseと呼んでいる最新の2人用ツリーハウス。4本の木の間に組み上げられ、長い螺旋階段で上がります。(ここもトランクが不似合い!)覗く人のいないお部屋はガラスが多用され、真っ白なベッドやイスが可愛らしく並んでいます。メゾネットスタイルの上階はテラス席。更に!ツリーハウスから長く長く伸びた吊り橋の先にも専用のテラス席。でもご用心。夜はここもランプの明かりを頼りにゆれる橋を渡らなくてはなりません。ここでハネムーンを過ごすカップルは幸せでしょうね。皆様どーぞ。
これらコテージの在る森は最初に見たダイニング棟からかなり離れています。羊のいる柵の間を歩いて歩いて私達のコテージは中間より少し先で10分位でしょうか?一番先のサウナのさらに先には、お1人様用Three House。ここも勇気が要りますが体験してみたいですねぇ。お人形の家みたいでした。
夕食は先ほどのダイニングへ。ワンプレートのシンプルな料理。マトンに具沢山のソース、そして野菜類。(ポテトが美味しい!)このマトン、もしやそこに居た羊?顔と足が黒くて毛並みはグレーの美しい羊たちです。今日生まれた!と言う子羊は真黒。
食事を終えてダイニング裏のテラスから湖の側へ行ってみます。ここは北欧。8月の日が長く、この辺りは白夜まではいきませんが夕食後充分に遊べます。湖に出て、息をのみました。やかまし村!村のお父さんが子供たち全員(と言っても3軒しかない)を連れて、ザリガニ捕りに行った湖そのものです。そして何とオーナーの娘さんが、ガビさんの息子グラントくんと小舟を出してザリガニを捕る仕掛けを下ろしていました!あの世界が本当に存在していた。今そこに私は居る。この旅の忘れられないシーンの1つとなりました。
5日目、ご近所の個人宅へお邪魔しました。プロ並みの素晴らしいお庭を作っている方です。そう言えばスウェーデンに居る間、日本人には殆ど会いませんでした。首都であるストックホルムでさえ。ましてこんな森の中では他の人に会うことさえ稀です。なので何と!現地の新聞記者が取材に来てしまいました。”日本人、大挙して来たる。”この新聞記者のおばちゃんも大きかったぁ。
このお宅の方はクレマチスが大好きだそう。冬はさぞかし寒いでしょうこの土地で、無事冬越しをさせたり、違う土地の植物を隣同士に植えたりするコツ、植物を管理し、(岩の間を流れる水音までコントロール)”決してあきらめず”野兎を追い出したり、ヘラ鹿は・・・どうするのでしょうか。首を振って言っていました、”あれが来ると台なし”。お家も可愛くて、カール・ライセンの家の様でした。台所は竈と向い合せに電子レンジやIHが並びます。”夫が火事になるから竈は使っちゃダメ、と言うのよ。でも本当は竈の方が美味しく出来るワ。夫が留守の間にかまどで作っちゃうのよ”。
この日のディナーは”ザ・ザリガニパーティー!”窓辺にザリガニのオーナメントを飾り、真っ赤に茹で上がった山盛りのザリガニ。ずいぶんと頭でっかちです。奥さんが食べ方を教えてくれます。要はエビの食べ方ですね。日本の池にいるザリガニとは違いました。ロブスターの様に大きくて硬いハサミです。これも短い夏のお楽しみなのでしょうね。
きのうは真っ暗な中、苦労したので明るいうちにサウナとお風呂に入ります。大きな木のお風呂。本当は水着で入るんだったのかナ?薪で炊いている音がパチパチ聞こえます。水は多分湖の水です。色がね・・・!
夜10:00頃よりパーティー!?手に手にランプや懐中電灯を持って皆集まっています。暖炉の温もりの中、オーナーが外から取って来た枝で笛を作ってくれました。アルミカンでも”モダン”な笛を作ってしまいます。そうこうする内、おねむに。自然の中で新しい体験をし続けるのは、それなりに体力、気力も使うものです。
翌日、朝もやの中散歩したり顔を洗ったりヨガをしたり、思い思いに時間を過ごします。木立の中
、差し込む光の美しいこと。不似合いなトランクのふたを閉め小道に出します。ここでは役立たずの頑丈さも、荷物の大きさも何とはなしに気恥かしい感じ。二度と来れないこの景色をしっかり心に刻んで・・・と口々に言いつつ、イヤ待てよ、また来れば良いのです。ここはいつまでも存在している。夢の様だったけれど夢ではなく、遠いけれど彼方にある。そう思うだけでも少しほっとして、後ろ髪をひかれつつ優しいオーナー夫妻に見送られて出発。いよいよストックホルムへ向かいます。
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