チェンジリング

タイトルの『チェンジリング』とは、「取り換えられた子供」という意味である。妖精が子供をさらい、その代わりに醜い妖精を置いていくという西洋の古代神話からくるのがこの語だ。

たとえその妖精が醜くなくとも、逆に天使のように美しかろうとも、自分の子がいなくなり、他人の子が自分のもとに置かれるとしたなら、親の気持ちはいかほどであろうか。そんな悪夢が80年前には現実に起こっていたという残酷な“事実”を、監督クリント・イーストウッド、主演アンジェリーナ・ジョリーという奇跡のタッグがスクリーン上に紡ぎだす。

1928年、ロサンゼルス。母親のクリスティン・コリンズ(アンジェリーナ・ジョリー)は9歳の息子と2人で、共に郊外で暮らしていた。電話会社で働きながら我が子を養い、決して楽とは言えない生活をしていたクリスティン。ある日、自宅にいるはずの息子が忽然と姿を消す。5ヶ月後、捜索願を出していた彼女のもとに、市警から「息子さんが見つかった」との連絡入る。喜びいさんで息子を迎えに行った彼女だったが、息子を名乗るその少年はまったくの別人だった…。

クリント・イーストウッドといえば、人と人との別れやそれに至る経緯を深い角度で抉り出し、人間が様々な形で直面せざるをえない悲しみや苦しみという深く濃い影を、目をそらすことなく丹念に描き出す作風で知られる監督だ。
本作でもその技量は存分に発揮され、彼はこの作品で巨匠としての立ち位置を不動のものとするだろう。

一方のアンジェリーナ・ジョリー。大抵、こうした設定の主人公は一点の曇りもなく、正義の象徴として描かれる。確かに彼女は正義のヒーローであるにはあるが、我が子のために、時には悪魔のような一面も見せる。そうした微妙な表情、微妙な心の内を実に見事に表現しきり、女優としての実力を存分に見せつけた。

2009年、確かにあなたの心を鷲づかみにするであろう1本。ぜひ劇場で、映画史上に残るであろう大作をご確認いただきたい。

チェンジリング(Blu-ray)
アンジー来日で、拉致問題にも言及?!
監督:クリント・イーストウッド
脚本:J.マイケル・ストラジンスキー
出演:アンジェリーナ・ジョリー /ガトリン・グリフィス /ジョン・マルコビッチ/コルム・フィオール
配給:東宝東和
ジャンル:洋画

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