少年メリケンサック

ピンポン』や『舞妓Haaaan!!!』の脚本で知られるクドカンこと宮藤官九郎が、奇才としてのその才能を監督・脚本として魅せつけた本作。ここまで来ると奇才というよりはまさに“鬼才”である。

退職寸前のレコード会社OL(宮?あおい)はある日、パンクバンド「少年メリケンサック」を動画サイトで見つける。彼らの才能にゾッコンで惚れこんだ彼女は、契約を取るために彼らのもとへ向かう。だが、その映像はなんと25年前のものであり、メンバーたちは落ちぶれたオッサンになりさがっていたのだ。だが現実とは裏腹に、バンドの人気はネット上で大爆発。全国ライブツアーも次々と決まってしまい…。

と、ストーリーをざっくり知っただけでもワクワクする舞台設定である。それに付け加え、キャスティングが見事にハマりきっている。四六時中キャンディを舐めてばかりいるユル?い主人公には、NHK大河ドラマ『篤姫』で主演を演じた宮?あおい。あの篤姫がこうも崩れてしまうのか? と見まごうほどの怪演ぶりは、見ていてスカッとした気分になれる。
他、兄弟としての確執を持つギタリストとベーシストに佐藤浩市と木村祐一、年をとってある障害を持ってしまったボーカリストに田口トモロヲ。そして「ザ・スターリン」の遠藤ミチロウや「アナーキー」の仲野茂、ギターウルフのUG、銀杏BOYSの峯田和伸など、ロックファンなら思わずうなってしまう顔ぶれも随所に見受けられる。

「年には勝てない」…確かにそれも真実だろう。だが、年輪を重ねたからこそ出てくる“いぶし銀”としての魅力は、若い頃には出したくても出せないものだ。年をとって失ったものも確かにあろうが、逆に得たものだって必ずあるはず。それを大切に大切に、勲章のように胸に飾りながら生きていこう。

どこからでもやり直せるし、いつでもぶち壊せる。どうせやるなら派手にぶっ壊そうじゃないか。そんなアッケラカンとした勇気が湧いてくる、秀逸なコメディだ。

少年メリケンサック(Blu-ray)
監督:宮藤官九郎
脚本:宮藤官九郎
出演:宮?あおい /佐藤浩市 /木村祐一/田口トモロヲ/三宅弘城/ユースケ・サンタマリア
配給:東映
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.meriken-movie.jp/

© 2009「少年メリケンサック」製作委員会