もともと映画とは、現実と異なる世界への探訪でもある。とりわけ、アニメは実写と違い、観る者に未知なる世界への扉を開いてくれる。閉じ込められた暗闇の劇場の中から、何の制約もない、ありとあらゆる思いつく限りの想像の世界へと、我々を導いてくれるのだ。
本作は7つの短編アニメから成り立つ。台詞がまったくなく、映像だけで紡がれていくストーリー。虐められっ子の少年が、秘めた力で悪に立ち向かうストーリー。死の国に紛れ込んだ“生き物”を救おうとする少年たちのストーリー。自分以外の自分に翻弄される奇妙なストーリー。難解な思考理論をつぶやきながら、自らの存在意義を問う男のストーリー。機械で夢を見ていた赤ん坊のストーリー。とある高校生男女の、ほのかに胸が熱くなるような恋愛ストーリー。これら新進気鋭の作家たちが紡ぎだす秀逸な映像群は、日本が誇る“アニメ”という文化の底力をいとも簡単に見せつけてくれる。
短編であるから、それぞれのエッセンスが凝縮され、観る者の心に余韻が残る。あのストーリーの、あのシーンとあのシーンはいったいどういう意味だったのだろう? と、考える余地を与えてくれる。それは真夏の午後の昼寝にも似て…さっき見ていた夢の断片だけは鮮やかに脳裏に焼きついているのだが、その全容は思い出すことができない。シーンからシーンを手繰り寄せ、手繰り寄せ…。ということは、あれはそういう意味だったのか? などと、蝉の声と風鈴の音が鳴り響く中、ずうっと脳の中を探る。そんな贅沢な時間の質感にとてもよく似ている、不思議な感覚の作品群なのだ。
Genius Party<ジーニアス・パーティ>(DVD)
監督:福島敦子/河森正治/木村真二/福山庸治/二村秀樹/湯浅政明/渡辺信一郎
出演:柳楽優弥(声の出演) /菊地凛子(声の出演) /栩原楽人(声の出演)
配給:日活
ジャンル:邦画
公式サイト:http://www.genius-party.jp/