秋葉原(アキハバラ)といえば、言わずと知れたオタク文化の聖地である。そのアキハバラ、その昔は「アキバハラ」と呼ばれていたのだそうだ。あき「ば」はら。濁点の位置が「原(バラ)」ではなく「葉(バ)」のほうにあるのだ。江戸の当時、火事が多かったこのあたりに、鎮火神社としての秋葉神社(あきばじんじゃ)が設けられ、以来、秋葉原(あきばはら)と呼ばれるようになったこの地。秋葉原を略して「アキバ」と呼ぶのも、ここからきたのらしい。だがその後、鉄道の駅名が秋葉原(あきはばら)と命名されたことからその名称は一般化し、全国でも「アキハバラ」の呼び名が定着するに至ったのだ。なぜ、それまでのアキ「バ」ハラからアキ「ハ」バラに読み方を変えたかの理由は、文献が残っていないためJR側でも分からないのだそうだが。
そのアキハバラで活躍するオタクな若者たちの夢や希望、友情を描きあげたのが本作である。アキバ系のオタクな男性たちを総称して「Aボーイ」と呼ぶのだそうだが、社会からドロップアウトしたそのAボーイたちが、自分たちの人生に再チャレンジするべく、小さいながらもベンチャー企業を設立する。その会社名が「アキハバラ@DEEP」だ。既存の社会の枠には納まることのできなかった彼らだが、ありあまるその才能を駆使し、IT業界を騒然とさせる革命的なソフトを独自に開発する。それに目をつけた巨大IT企業が彼らに近づいてくるが…。
たとえ人と少し変わっていても、社会に馴染むことが苦手だったとしても、オタクな彼らに失格者の烙印を押すことは性急すぎるだろう。社会に充分適応し、経済的に大成功を収めている企業家であったとしても、肝心な「人間としてのあり方」が善なるものに基づいていなければ、その人生は虚しいものである。逆に、社会からはなかなか認められないAボーイたちであっても、その信念が善なる方向性に伸びているのなら、必ずやその意志は報われることとなるのだ。
アキハバラ@DEEP(DVD)
原作:石田衣良
監督:源孝志
出演:成宮寛貴/山田優/忍成修吾
ジャンル:邦画
© 2006「アキハバラ@DEEP」パートナーズ