タイトルだけで充分笑える。以外ってなんだ、以外って。
小松左京原作の『日本沈没』を受け、星新一が「日本以外が全部沈没したらどうなる?」とまったく逆のアイデアを出し、筒井康隆がそれを書き上げたという、日本SF界としては歴史的位置付けにある小説。これがこの映画の原作になっている。
日本以外がすべて海中に没していく中で起こる、世界情勢の急激な変化。大陸が沈んでいく様子などの派手なシーンはなく、本作の焦点はもっぱら国と国との関係性だ。国家というものを位置付ける陸地という領土が瞬く間に消えうせたとき、国としてのアイデンティティを保つことはこんなにも困難になる。と同時に、我々を悩ませている他の国との様々な関係性が、こうも様変わりしてしまうのだ。
“原典”の『日本沈没』も今年7月に映画化されているが、それを意識しているのかどうか、オープニングからして炎の映像である。ほかにも、小泉首相、天気予報の森田さん、アメリカの某映画監督、中国や韓国の要人…と、そのパロディっぷりは見事だ。特に、ブルース・ウィリスのそっくりさんは圧巻。スクリーンに映っているだけで、それだけで笑えてしまう。確かこの人、いつかの物まね番組で、素人さんの登竜門的コーナーに出てきてたのを覚えているのだが。ここまで出世したのか…と思うと、感慨ひとしお(?)である。
壮大な設定とは裏腹に、チープな作りが絶妙な味を醸し出している本作。筒井康隆本人の特別出演シーンも見逃せない。
日本以外全部沈没(DVD)
原作:筒井康隆
監督:河崎実
出演:小橋賢児/柏原収史/松尾政寿
配給:アスミック・エース エンタテインメント
ジャンル:邦画
© 2006映画「日本以外全部沈没」製作委員会