ソウル・フードを辞書で引くと「アメリカ南部独特の黒人料理」と出てくる。だが、本作が指すところのソウル・フードとは、「誰もがひとつ持っている、お腹も心も満たされる食べ物」なのだ。
主人公の故郷は讃岐うどんで名高い香川県。東京にマクドナルドは500店あまりだが、香川のうどん屋は約900軒。うどん密度はべらぼうに高いのである。そのうどんこそが、主人公のソウル・フードだ。お笑い芸人を目指して単身ニューヨークへ渡った主人公を待ち構えていたのは、あっけない挫折。気難しい頑固親父が営むうどん屋の実家に仕方なく戻る主人公だったが…。
ハートウォーミングなコメディ、と一言では片付かないのが本作の特徴だ。これでもか、これでもかと、ブームを仕掛ける広告業界の裏側、あれよあれよと乗せられてしまう日本の国民性、物語での絶妙な隠し味になっているCGアニメ、まるで漫才を見るような見事な掛け合い、何があっても変わらない家族の絆…そういったものが小気味よいテンポにつつまれながら展開されていく。故郷の名物を中心に織り成された人情ドラマなだけで片付く作品ではないのだ。日本映画界を代表する俳優陣がふんだんにカメオ出演しているのも、宝探し気分でなんとも楽しい。実話をベースに脚本を書いているという、その数々のディテールも微笑ましい。さすが、『踊る大捜査線』の亀山千広プロデューサー&本広克行監督コンビである。
ときに、うどんは英語でもUdonと呼ばれている。なぜ本作のタイトルは「うどん」でも「ウドン」でもなく、「UDON」なのか? 仰天のラストに、その答えは隠されているのだ。
UDON プレミアム・エディション(DVD)
監督:本広克行
出演:ユースケ・サンタマリア/小西真奈美/トータス松本(ウルフルズ)
ジャンル:邦画