地曳き祭りの朝、町の有線放送が流れた。
「本日予定されていた地曳き網は、波が高いため中止になりました」
うそーっ! 地曳き祭りなのに地曳き網やらないの????
地元にいながらこれまでただの一回も参加したことがないので、今年はぜひと意気込んでいただけに、かなりのショック。
「なお、そのほかのイベントは予定通り行ないます」
ああ、それはよかった。YOSAKOIソーランや浜ソーラン、ぼさま踊りは無事だ。地曳き網はできなくても、せっかくの祭りだもの、踊りを見に行こう。
九十九里浜に面したわが町、大網白里町。ただし、その地形は東西に伸び、隣の九十九里町や白子町のように海岸線に平行ではなく、むしろ垂直。海に近いと言っても自宅からだと10km近くあるので、用がなければ行かないし、夏は観光客で生活道路が大渋滞。海のおかげであまり嬉しくない側面もある。
祭り会場に着いた。
砂浜の海の家近くの町営駐車場がメイン会場。波をバックに「踊りコンテスト」が始まる。
「浜ソーラン」は、言わずと知れたロックソーラン。中でも一番有名な「南中ソーラン」(北海道の稚内南中学校で最初に踊られたロックソーラン)を各チームが踊る。
「YOSAKOIソーラン」はさらにハード。鳴子を持って踊ること、というのが唯一のルールという自由さ。振付も自由自在。ジャズダンス風ありヒップホップ調あり。衣装もあでやかでキュートで粋だ。小さい子から大人まで、跳ぶ、はねる。勇ましい、かっこいい!
札幌から始まったYOSAKOIソーランも今や全国区。もともと「よさこい」は高知、「ソーラン節」は北海道、そしてここは九十九里。つまり、踊り手がいればどこでも良いのだ。
町おこしとしての“祭り”という視点から見れば、“若い衆”が積極的に参加できなければ、その祭りは先細りせざるをえない。
その点、YOSAKOIソーランは全国各地で成功している。
ただし、中高年には踊りがきつい。
そこをカバーするのが「ぼさま踊り」だ。「ぼさま踊り」は麦打ち唄を基本にした地域伝統の盆踊りで、イネや麦などの穂や実をサオで打つ動作をする。ゆるやかな動きにユニークな衣装で、3歳児から、どうみても80歳は越えている!と思われる人たちまで幅広い年齢層が楽しそうに踊っている。鯉のぼりを着ているグループも(人魚姫?)。
しばし、祭りの喧噪を離れて海の家へ。すでに夕方で空いているせいか静かだ。「祭り」サービスで焼きそば半額! これは屋台より嬉しい。かき氷はシロップかけ放題(このごろそういうセルフサービスが増えている)。子どもに混じって楽しんでしまったレインボーかき氷。下手に混ぜると全体が 茶色っぽくなるので注意。
波を見ながらほっと一息。
街なかのお祭りもいいけれど、海岸のお祭りにはこんな静かなスポットもある。海は、キャパが広いから。どこまでも広がる白い砂浜。はるかに見える水平線。
いいなあ、海って。
日が暮れる。空と海がだんだん深い色に変わっていく。一番星。
夕闇に祭りの光が映える。そろそろ踊りを見に戻ろうか。