第132回 洋楽編 EXTREME――ファンク・メタルに留まらない、アーティスティックな実力派集団

ファンク、ソウルミュージック界の大御所、ジェイムズ・ブラウン スライ・ストーン の映画が公開されて話題になっていますね。音楽総研の読者の方には俺がHR /HMファンなのは知られていると思うんだけど、ジェイムズ・ブラウン SLY & THE FAMILY STONE  のようなファンクやソウルも聴きます。もちろんブルーズも聴くよ。ブラックミュージックは大好物! 俺に限らずHR/HMファンはいろんなジャンルの音楽を聴いていると思うし、それがミュージシャンなら言わずもがなで、様々なジャンルからの影響を自身の音楽に反映させている。ブルーズはハードロックとの相性も良いし、ブルージーなハードロックバンドはたくさんいるよね。ファンクやソウルの場合は、ソウルフルなシンガーはいてもリズムがファンキーになり過ぎるとHR/HMじゃなくなるから、そういうバンドはほとんどいないけど。音楽のジャンルを決定付けるのは、メロディや音色よりも、実はリズムによるところが大きいのです。……さて、前置きが長くなりましたが、今回はその相性が悪いはずのファンクとHR/HMを見事に融合させたバンド、EXTREME  をご紹介!

extreme.jpgEXTREMEは89年にデビュー。自らの音楽性をファンク・メタルと称しながらも、それに留まらない幅広い音楽性でHR /HMファンのみならず一般の音楽ファンからも支持を集め、セカンドアルバム  からのシングル『More Than Words』は全米チャートの1位を獲得。デビュー当時はヌーノ・ベッテンコートのテクニカルなギターや、ゲイリー・シェローンの喋るように歌うスタイル、HR/HMにしては明るい曲調からVAN HALENっぽい印象があったけど、よりファンキーさを強調したセカンドアルバムで大化け。他の誰とも違う音楽性を確立した。このセカンドアルバムは本当に良く出来ていて、誰がなんと言おうが名盤! ……ただね、今回はファンクというキーワードで書き始めたけど、EXTREMEはTHE BEATLS並みのメロディアスでキャッチーなコーラスやヌーノの天才的なギターワークなど他にも魅力がいっぱいで、ファンクだけで語るのはもったいないんです、実は。


『More Than Words』
全米ナンバーワンを獲得したヒットシングル。ビートルズばりの美しいハーモニーが秀逸です。
リズム隊は出番なし(笑)

確かにEXTREMEにはファンキーな曲が多く、ファンク・メタルと称していたのも頷ける。それまでもHR/HMにファンクを取り入れたバンドがいなかったわけじゃないけど、EXTREMEほど大々的かつ、うまく取り入れたバンドはいなかったと思う。あんまり“黒く”なり過ぎるとHR/HMとして成り立たなくなるし、どちらのジャンルからも中途半端なものに映ったかもしれないのに、EXTREMEは絶妙なバランスでそれを実現させていた。少なくとも、HR/HMファンの俺にとっては驚くほどカッコ良く聴こえたよ。そしてこの当時、EXTREMEのスタイルはとても斬新なものとして受け入れられ、正統派のHR/HMバンドまでもがEXTREME風のファンキーな16ビートを取り入れるなど、一大ブームの様相を呈する。

そんなふうに流行ってしまったからなのか、EXTREME自身はファンク・メタルというスタイルには固執せず、続くサードアルバム  ではさらに進化した新しいサウンドを開発してみせた。ファンク・メタルどころかHR/HMにも収まりきらないような楽曲は、THE BEATLS QUEENにも匹敵するほどバラエティ豊かで、音楽性も芸術性も高かった。90年代前半、多くのHR/HMバンドが過去の遺物として駆逐されていく中、EXTREMEはジャンルを飛び越えて、グランジやオルタナティヴといった新しい音楽のファン達からも受け入れられるような資質を持っていたと思う。でも、ここで離れていったファンもいたんじゃないかな。違うところへ行ってしまったと感じてしまうぐらいの変化があったか
らね。クオリティの高さは誰もが認めていたと思うけど。


『Get The Funk Out』
これぞファンク・メタル! ホーンのアレンジもいいね。しかし、ヌーノのギター凄すぎ……

4枚目のアルバム  を発表後、全曲の作曲とプロデュースを手がけていたヌーノが脱退、ソロアーティスト  として活動を始め、96年にEXTREMEは解散してしまう。その後ゲイリーがなんとVAN HALENに加入するも、1枚のアルバム  のみで脱退。それ以降、歌も上手いヌーノ以外のメンバーの動向はあまり聞かれなくなった。それでも世紀をまたいだ辺りからヌーノとゲイリーの共演が行われるようになり、07年についに再結成! 翌年にはニューアルバム  も発表し、現在も順調に活動を続けている。


『Midnight Express』
EXTREME、というより、ヌーノの音楽性の高さがよくわかる楽曲。いやー、アコギでこれは凄いわ……

EXTREMEは音楽的な懐がとても深いバンドだ。アルバムごとにアプローチを変えてくるし、底がまったく見えない。そして、必ず前作よりも進化している。08年以降、オリジナルアルバムは発表されていないけど、そろそろ新作が聴きたいな。あの才能豊かなミュージシャン達は、今度もまた予想を遥かに超えた凄いアルバムを作って、俺を驚かせてくれるはず……。

※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
とにかくここから  アクセス! 動画もあるよん。
http://dokodemoguitar.com/