バトル・ダーク―ボディーガード工藤兵悟3

ナイトランナー』、『チェイス・ゲーム』に続いて、本シリーズ3作目。
ここへ来て、シリーズは果たして「ミステリー」という仕分で、正しくカテゴライズし得ているのかという疑問が生じる。まあ、警察ものでは断じてないし、探偵ものでもいわゆる推理ものでもないことは誰の目にも明らか。かといって諜報ものとも言えない。
つまり、早い話がズバリ「ボディーガードもの」だな。まんまか……。

請け負う案件は常に困難。クライエントには複雑な背景があり、対戦相手は国際的かつ過激、激厳。交戦はリスキーで闇と光、合法と非合法を縦横無人に往来できなければならない。「ボディーガードもの」なるカテゴリーに必要と思しきスピリッツ・真髄をゴージャスに品ぞろえした完璧なライン取りだ。

加えて本作ではスペシャルな付帯条件が列に加わる。
クライエントはそこそこ実力派の国際ジャーナリスト。傭兵時代にタッグを組んだ戦友と再びタッグを再編成して工藤が対戦するのは、かの世界中に知れ渡った宗教がらみテロリスト集団もどき。そしてスペシャルラインには、日本の誇る「合法暴力団体」、場合によっては、またの名を「警察」と来れば、その戦いの壮絶っぷりに、いくら「旨いものはいくらでも食える」と言いながらも、読者の満腹感は昇天する。

最終盤、「非合法」といえども、そこに貫く「正義」が故に、さすがの「合法」も道を開ける。「そうか、へー」と胸をなでおろしたところで、シリーズ1、2には掲載のなかった「解説」に目を通してみる。1、2の「おさらい」になるのはもちろん、ありがちな「武闘もの」と本シリーズの決定的な差異のありかを知ることができ、引いては全編を思い返すに、ちらり覗き見る作者の世界観が適度なスパイスになっていたと思い当たる。

ああ、面白かった!!!

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作者名:今野 敏
ジャンル:ミステリ
出版:ハルキ文庫

バトル・ダーク―ボディーガード工藤兵悟3