「良いものを時代を越えて遺したい」コラージュ&ステンドグラスのRty(ルティ)田口久美子さん前田夏子さんインタビュー!

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【Rty】candle holder ¥5000+税
Rty(ルティ)はコラージュとステンドグラスの技術を組みあわせたインテリア小物を製作しているブランドで、ステンドグラス作家のiri/田口久美子さんとコラージュ・アッサンブラージュのécume de mer/前田夏子さんのコラボレーション。ブライダル用のオーダーメイドのWelcome boardをはじめ、“物語を次世代へ”をコンセプトとした「壊れたものを新しい存在へ生まれ変わらせ、光を灯す」作品などを制作。
今回は、Rtyの田口久美子さんと前田夏子さんに個人での活動からRtyへの思いについて、おふたりに話を聞いた。

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【iri】candle holder ¥5400+税
★iri/田口久美子さん=温かみとノスタルジーが漂うステンドグラス

田口:もともと、習い事としてステンドグラスを始めました。インテリアの本に載っていたステンドグラスのランプに惹かれ、自分でも作れたらいいなと思ったことがきっかけでした。作れるようになってくるとうれしくて友達にプレゼントしたり。そうしていると「販売してみたら?」って言われる機会が増えて……。そんなことから作家活動が始まりました。荻窪の『六次元』で開催された、様々なジャンルの作家が作品を販売するマーケットに参加したのが最初の活動です。その時は、キャンドルホルダーを販売したんですけど、買ってくださったお客さまからのちに「部屋にひとつそれがあるだけで生活が豊かになった」って言ってもらえて……。その時は凄く感動して、もっとやってみたいなって思いました。

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【iri】candle holder ¥13800+税
——ステンドグラスの魅力は?  

私はガラスが好きなんだと思います。透明だったり、不透明だったり、テクスチャーだったり……。
見ているだけで楽しくて、素材としての魅力に惹かれました。光に透かしてみると、その時々で表情が変わっておもしろいんですよ。ランプやキャンドルホルダーであれば、ライトや炎を灯した時とそうでない時で見え方が全然違い、奥深さを感じます。
今作っている作品は、キャンドルホルダーやミラーなどの小物、ランプ、アクセサリーです。最初はカラフルなものを作っていたんですけど、もともとアンティークなものが好きだったこともあって、最近ではシックな色合いのものを作っています。アンティークショップで売っているような雰囲気のものにしたいなって。長く愛用していただいて、本当のアンティークの様に育てていただけたらうれしいです。

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【iri】flower vase ¥6400+税
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【iri】壊れた器とガラスを繋いだ"tsukuroi"シリーズ

——制作方法は?

ステンドグラスはガラスを溶かして作っていると思われる方もいますが、そうではなく、様々な色や質感の板ガラスをガラスカッターで切って、ハンダで繋いでいます。
手順としては、まずスケッチを描いてから方眼紙に展開図をおこして、それから型紙を作ります。その型紙をガラスに当てて、ペンでラインを付けて切っていきます。それを今度はルーターという機械で断面を削ります。そしてコパテープというテープを巻いていきます。このテープを巻いた部分にのみハンダが付くんです。ハンダ付けで成形した物を最後に薬品で腐食させます。見かけより行程も多いし、時間がかかるんですよ。
最近では、壊れた器をガラスで繋ぐ作品を作っています。『金継ぎ』のステンドグラス版というイメージでしょうか。お客さまの壊れた器をお預かりして、ガラスやタイルで繋ぎます。壊れた器を甦らせる感じですね。これから力を入れていきたい作品です。

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【écume de mer 】le soir slargit dans une âme “たましいにひろがる夜”
★écume de mer/前田夏子さん=物語をコラージュにして作品を

前田:大学でフランス文学の勉強をしていました。ジャン・コクトーやポール・エリュアール、フランソワーズ・サガンが大好きで、ジャン=ポール・サルトルなど哲学の勉強も。フランス文学の勉強を目指したきっかけは、白黒がハッキリとしていない物語の中に隠され たヒントがあって、それを自分で解釈するような、そんな感じのフランス映画が好きだったので、それが始まりでした。存在しているものよりも、目に見えないものを探ることが好きで、いつも何かの答えを探しながら、より深く暗い方を目指してしまったんです(笑)。60年代の錯綜していた時代に生まれたフランス映画のような、目に見えないものや人間味、その実態や美しさを、どう形に落とし込むかが私のテーマです。そういうものをテーマにコラージュだったり、アッサンブラージュという立体だったり、標本箱の中に感覚で並べて創作していきます。すこしシュルレアリスム的な要素もあると思います。

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【écume de mer 】aveugle"盲目"
人はいろいろなことを忘れてしまう……。例えば誰かが亡くなって、とても悲しい出来事なのに、1年、2年、3年と経っていくと徐々に忘れてしまう。その時の想いと感覚を作品に落とし込むことで、その作品に触れた時に、その時の感情を思い起こす“装置”みたいなものが作れたらいいなって。最初は必死に制作をしていました。そうしないと記憶がなくなっちゃうって思っていましたので。ただ自分を癒す行動として作品を作っていたように思います。忘れたくないって気持ちがとても大きくて日記も大量に付けていました。ちょっと病的だったかもしれませんね。

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【écume de mer 】new year card-cheval“午年”
——制作方法や作品への思いは?

素材は雑誌の切り抜き、押し花やドライフラワー、ボタニカルアートなどの標本図鑑や文献、古い写真。立体ではアンティークのブロカントなどを使っています。自分の記憶の中の小さな出来事の蓄積とその時の想いなどを閉じ込めることによってほっとしたような感覚になります。
そういった作品をだれかに観てもらうことで、もしかしたら同じような気持ちの人がいるかもしれないって。私も本を読み、答えをもらって心が救われたことがありますから、私の作品に出会って何かを感じてもらったり、またそう思うことが、私自身を救ってくれていることもあります。
今までは自分の記憶を閉じ込める作品作りをしてきましたが、今度は、どなたかの記憶をお預かりして、例えば、ずっと大事にしていて捨てられないものや、特別なもの、その人のアイデンティティなどを標本のように作品にできたらと考えています。

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【écume de mer 】"時も何もかも流れ出しとめることができない"という感覚を もとに創作した作品
★Rty(ルティ)はコラージュとステンドグラスの技術の組みあわせ

——ユニットを組んだきっかけは?

前田:出会ったところはヨガ教室。アートとは関係のないところだったんです(笑)。
田口:ちょっとスピリチュアルな感じのヨガ教室でした。暗い部屋でキャンドルを灯して……。そこに私のキャンドルホルダーを寄贈したりしました。
前田:そのヨガ教室の作品を見て、異素材と異素材でなにか面白いものが出来そうな気がしたんです。私がものを閉じ込める作品作りをしているのを受けて、田口さんがガラスとガラスの間に押し花と何か素材を閉じ込めることができるかも知れないと提案してくれたんです。
田口:私もなにか異素材と組み合わせて表現することは面白そうだなって思っていました。新しい表現の広がりができましたね。

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【Rty】初期作品のオーナメント・壁掛け
——最初に一緒に作られた作品は?

田口:小さな壁掛けが最初の作品です。
前田:私が絵の具でイメージを形にして閉じ込めて、壁掛けはキャンドルフォルダーの前面だけを使った感じの作品です。
田口:その時はコラボというよりは、彼女の作品のお手伝いをした感じでしたね。彼女のイメージをステンドグラスの中に閉じ込めたといった感じ。

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【Rty】 welcome wreath ¥35000+税
——Rtyの意味は?

田口:Rtyはチェコ語で“唇”という意味です。
前田:とても響きが良かったんです。特別なものが口から口へと継承されるように、良いものを時代を越えて遺したいという思いから名付けました。
それぞれのブランド名の、iriという言葉がイタリア語で虹という意味で、écume de merがフランス語で海の泡という意味なので、そこから何語にしようかなって。

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【Rty】 welcome board ¥38000+税
——Rtyとしてのコンセプトは?

前田:ブランド名にも繋がりますが、時代を越えて良いものを残していきたい。想いや物語だったり、そういったものを長く残していきたい。しかもパーソナルなもの。そういったところが、私たちのいちばん大事にしていきたいところです。ひとつひとつがハンドメイド である以上、一点物になるんですけど、その人にとって特別なものになるようなオーダーメイド。大切にしていたけれども壊れてしまったものや、好きだった人が大事にしていたものだったり、そういったものをもう一度生き返らせたいなって。田口さんのステンドグラスはキャンドルやランプだったりと光を灯すものなので、希望や祈りがこめらるものだと思うんです。なので人を癒せるような力をもった作品にしたいなって。
田口:壊れた時に大事なものだったらどうにか直らないかなって思ったりするじゃないですか。ひとつのものを長く大切に使ってほしい。そういった人たちに選んでもらえたら嬉しいですね。
前田:今の消費社会って、人間の大事な部分を壊してしまっているようで恐いんです。
田口:私たちの思いを支持してくださる方が増えたらいいなって。ひとつのものを吟味して買う気持ちを大切にしてもらいたい。ものを大切にする気持ちを。

——今後の作品の展開は?

前田:今年の1月に『ART Wedding & party Hoshinoiro』というウエディングの展示会があり、そちらで作品を発表させていただきました。今後は代官山の『やさしいきもち – wedding party – 』のアトリエショップに商品を置かせていただけることになっています。
田口:Rtyのホームページとウェブストアも開設しました。また、いろいろと企画展なども計画できればと思っています。みなさん応援お願いします。

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左:田口久美子さん 右:前田夏子さん

■Rty HP:http://r-t-y.tumblr.com
■ウェブストア(BASE):http://rtyrty.thebase.in

■iri HP:http://iriiri.com/
■écume de mer HP:http://ecume-de-mer.com/

■やさしいきもち – wedding party –
150-0021 渋谷区恵比寿西1-33-3光雲閣310
営業時間:12:00-20:00
フリーダイヤル:0120-949-894
FAX:03-6809-0572
HP:http://oiwaishimasho.com/

Rty012.jpg ■取材協力:Gallery Conceal Shibuya
場所:東京都渋谷区道玄坂1-11-3 富士商事ビル4F(京王井の頭線渋谷駅西口改札より徒歩3分)
連絡先:03-346
3-0720
営業時間:11:00-23:00(イベントによる営業時間の変動有)
定休日:不定休
HP:http://galleryconceal.wix.com/gconceal
twitterID:GalleryConceal
★展示レンタルは一週間単位で入れ替わり、併設されたカフェスペースではワークショップやcafeライブなどのイベントもございます。渋谷駅から近く、ゆっくりとした時間を楽しめます。スタッフ一同皆様のご来店心よりお待ちしております。