2014年1月24日(金)に開催された、和BLISSの第一弾。
江戸木彫刻の彫刻師・北澤一京さんの彫りの世界をレポートします。
今回は新宿高島屋の東京都工芸展に参加するということでお伺いしました。
一回りして多くの職人さんがいる中で一際目立つ出で立ちの北澤さんを見つけました。
目が合って挨拶をすると見た目とは違い優しい声が聞こえて来ました。
おや?と思っいましたが、優しい声はその口から確かに発せられ「よくおこしくださいました!」と続いたのです。それにつられたのか「こちらこそ今日はよろしくお願いします!」と、いつになく優しい声で深々とお辞儀をしている自分に微笑みながら目を見合いました!
勝手に凄みのある職人気質をイメージしていて、そんな初対面の瞬間を想像していましだが、全くもって裏切られ、現実世界の面白さを初っ端から受けてしまったのです。
早速、話が始まりました。
小さな木彫りの仏像を手にして「これがこれからこんな風になって行くのですよ。」と。
まだ、完成していない仏像を見るのも不思議なものだが、出来あがった仏像の繊細さや優しい顔立ちを見ると、目が止まってしまう。それだけで時間が過ぎて行くのがわかるのでした。
3cmほどのお面のループタイに目が止まってしまい、その表情に魅せられて、「これは屋久杉を使ったものですよ!屋久杉って知ってるでしょ?」と、話が弾み始めました。
屋久杉は彫るのにはいい素材であり、屋久杉を使うと年月が経つに連れて油が出始め、手で触っていくうちにいい濃い色になっていくそうです。そして、高冷地なので年輪の幅も小さく屋久杉ならではの木の表情がありました。また、屋久杉とは標高500m以上に生息する杉のことをいい、屋久島の杉が全て屋久杉ではないので買う時には注意が必要だと教えてくれました。
小さな木彫りのループタイにその色艶と表情が作品の顔立ちに更なる魂を吹き込んでいました。
写真は屋久杉ではないのですが、一番好きになった翁の顔のループタイです。
こんな優しい顔立ちを見ると、老人になった時の自分の姿に置き換えたくなるものです。
ここから彫り方の話しが始まると、顔つきが少しずつ締まってきました。彫刻刀は師匠から譲り受けるのではなく、弟子のころに月に2000円もらえる中から1500円相当のものを1ヶ月に1本と揃えて行くのだそうです。今では、400本以上の彫刻刀があるとのことですが、この部分にはこの彫刻刀、反対側はその逆の刃先のもの、彫りにくいところがあるとそれ用に角度や湾曲を加えて揃えて行くのだそうです。全て鍛冶屋さんに頼んで自分に必要な形のものを作ってもらい、握り柄の部分は自分の手に合わせて自分で作るという。自分の体の一部にならなければ失敗につながるのだろう……。
「それでも、失敗したりするとどうするのですか?」との質問には、即答で「絶対に失敗はしない!」と言い切りました。
「え?」とつい返すと。「失敗した事がない。」と目は笑っていました。
もちろん、失敗なく綺麗に彫ることが前提ですが、最終的には木を見たときに「描けるか?」だそうです。描けない人はこの職業には向いていないので他の職業を勧めるそうです。
北澤さんの作品は全て生気が宿り描写以上のものが感じられました。
小さくても、大きくても彫刻刀を変えて巧みに木を彫り続ける技がなせることだと。2月には大きな作品の仕事が入るとのことで、葛飾にある工房にお邪魔させていただきたいとのお願いに、快く「お待ちしてます!」と優しい声で深々とお辞儀をしていただきました。
和BLISSの第一弾として、良い日本文化に触れられ、第二段と続いていくことになりそうです! 日本人のルーツ、祭り、伝統と慣習の中に食を通じて旅をしながら今の日本の姿を見ていきたいと思います。
和BLISSは、日本の至福の姿です。
手に持ってる写真の欄間の龍の彫り物も見る人の気持ちや飾る場所・高さ・見上げる角度を計算し、木の特性も考えながらヒゲの強度や湾曲を加えて構図を作るそうです。
レポート:BLISS代表・古閑信宏