ヒット・ガールが帰ってきた! 当時はまだキッズだったクロエ・グレース・モレッツが、キュートなルックスとかけ離れた過激な言動と容赦のないバイオレンスで観客を虜にした前作『キック・アス』続編として製作された本作ではクロエが成長して少女になり、前作とはまた一味違った魅力が炸裂。果たして、「2作目の呪縛」に囚われることなく、前作を凌ぐ作品となるのだろうか?!
自前のコスプレに身を包み、自称ヒーロー「キック・アス」になりきるデイヴ。平凡なスクールライフに飽き飽きしていた彼は、ヒット・ガールことミンティに頼み込み、本物のスーパーヒーローとなるべく日々の特訓を開始した。だがある日、ミンティはおしとやかな「普通の女の子」になることを選び、デイヴとのヒーローごっこをやめてしまう。落ち込んだデイヴだったが、元マフィアの自称ヒーロー、スターズ・アンド・ストライプス大佐(ジム・キャリー)と出会い、みるみる活力を取り戻していく……。
どの映画にも言えることだが、1作目がヒットした場合、2作目がそれを超えることはかなり難しい。観客が1作目以上のクオリティを要求してくるからだ。本作では、前作同様にヒット・ガールの可愛さと過激さは健在。特に、クロエが前作から3年成長した分、前作とはまた違った大人びた魅力を振りまいてくれる。彼女がマイノリティな存在ゆえに生じるいじめのくだりなどは、観ていて胸が詰まりそうになるほどだ。
前作ではクロエの父親役としてニコラス・ケイジというビッグネームを起用。娘との、親密ながらも歪んだ愛情を演じ切り、本シリーズの設定を密度の濃いものに仕立て上げてくれた。本作でもジム・キャリーというスター俳優が投入されているのだが、全編に渡ってマスクを被り続けているので、注意して見ていないとジム・キャリー本人だということがなかなかわからず、彼の魅力が伝わってこない。加えて、彼が自称ヒーローとして立った由来が深く描かれていないので、感情移入もなかなかなされることはない。他のキャラクターに関しても、例えば黄色い彼の後半の処理のされ方も中途半端だし、悪役の動機も金持ちでおバカな狂人の遊びにしか見えず、何か心に葛藤があるわけでもないので、常人からすればよく理解できない。
そして何より、人が無意味に死にすぎる。軍人が戦闘の結果大量に死ぬのではなく、多少は劇中で触れられたそれなりのキャラが簡単に殺されてしまうのだ。こうした死に方はアメリカでは日常茶飯事なのかもしれず、その点ではリアルさを追求しているのかもしれない。だが、だとしてももっと深い意味と必然性がなければ、観客がその死に感情を揺り動かされることもない。
……とこう書くと酷評しているかのようだが、決してそうではない。アクション映画というジャンルで言えば、前述のとおり過激なヒット・ガールの魅力が今回も満載の本作。あの決め台詞だって健在だ。どんなにやられてもヘコタレず、世間一般のどうでもいい縛りに決して屈しない彼女の姿は、観る者にたくさんの勇気を与えてくれることだろう。
原作:マーク・ミラー、ジョン・ロミータ・Jr.
監督・脚本:ジェフ・ワドロウ
出演:アーロン・テイラー=ジョンソン、クロエ・グレース・モレッツ、クリストファー・ミンツ=プラッセ、ジム・キャリー
配給:東宝東和
公開:2月22日(土)ロードショー
公式HP:http://kick-ass-movie.jp
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