サイド・エフェクト

20130826cpicm.jpgセックスと嘘とビデオテープ 』でパルムドールを史上最年少で受賞し『トラフィック 』でアカデミー監督賞受賞、そして大ヒット「オーシャンズ」シリーズも手がけたスティーヴン・ソダーバーグ監督が、劇場映画としてはこれが最後と宣言した本作。第63回ベルリン国際映画祭コンペティション部門で世界中の評論家たちから大絶賛された本作は『コンテイジョン 』のジュード・ロウ、『エージェント・マロリー 』のチャニング・テイタム、『オーシャンズ12 』のキャサリン・ゼタ=ジョーンズと再びタッグを組み、『ドラゴン・タトゥーの女 』のルーニー・マーラといった堂々の顔ぶれを配して作り上げた、大人のサスペンスだ。

ニューヨーク。エミリー(ルーニー・マーラ)の最愛の夫(チャニング・テイタム)はインサイダー取引の罪で収監されていたが、刑期を終え出所となる。ようやく新たな夫婦生活が再開するかに見えたが、エミリーは夫の不在中に鬱を患っていた。自殺未遂をきっかけに精神科医(ジュード・ロウ)のもとに通うようになったエミリーは、新薬を処方され、幸せな人生を取り戻したかに見えたが……。

20130826cpic1.jpgつい先月、スティーヴン・スピルバーグとジョージ・ルーカスは映画業界の崩壊を予見したスピーチを行なったという。スピルバーグは「莫大な予算をつぎ込んで作られるブロックバスター映画は、業界の大コケの要因となる」とし、ルーカスは自身がプロデュースした作品を劇場公開することに並々ならぬ苦労をしたと語った。J・J・エイブラムスも映画製作の傍ら、すでに人気テレビシリーズでその手腕を存分に発揮している。それに倣ってか、ソダーバーグもまた今後はテレビ作品等の製作に専念すると公言したという。映画ファンとしては業界が「沈みかけた船」だとは1ミリたりとも思いたくもない。だが興業成績を重視するあまり、ハリウッド大作が総じて大味なのは残念ながら真実なのだから、先見の明を持つ重鎮たちがこの船から逃げ出しても文句は言えまい。

さて、ソダーバーグのその最後作である本作はといえば、特にアメリカの現代社会を巧みに映し出し、先の読めない入り組んだストーリーの極上のサスペンスとなっている。タイトルのサイド・エフェクトとは「副作用」の意。予告編は決してネタバレにはなっていない作りのはずだが、残念なことに私には何故か中盤までのカラクリがわかってしまい、どんでん返しの衝撃が薄れてしまった。このように、人によってはあの予告編からいろいろと悟ってしまう感受性の方がいないとも限らないので、できれば前知識はまったく入れずに鑑賞することをお薦めする。

本作も申し分ないサスペンスだし、また前述の有名作のほか、個人的には『ソラリス 』も心から大好きな作品だ。ソダーバーグには「やめるやめる詐欺」を何度でも繰り返していただき、ぜひとも映画業界に返り咲いて欲しいと切に願う。


監督:スティーヴン・ソダーバーグ
脚本:スコット・Z・バーンズ
出演:ジュード・ロウ/ルーニー・マーラ/キャサリン・ゼタ=ジョーンズ/チャニング・テイタム
配給:プレシディオ
公開:9月6日(金)より、TOHOシネマズみゆき座ほか全国ロードショー
公式サイト:http://www.side-effects.jp/

 

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