今回は、7月18日(木)からセントラルパーク(名古屋市中区)内のセントラルギャラリーにて、『ハヤシアキヒロ×Jpeg×セントラルパーク展』を開催するハヤシアキヒロさんに、カメラとの出会いからライカの魅力について話を聞いた。
うらら:カメラとの出会いを教えてください!!
ハヤシ:中学のときに修学旅行の写真係をやっていましたけど、そのときは好きな女の子の写真を撮って持っていたかったという不純な動機でしたね(笑)。高校時代は、映画監督になりたくて、そういった世界に入りたいなって。クリエイティブな世界に憧れていました。進学のこともあり、監督になるには、まずは助監督になれればと、私と同じ岐阜出身で、後に『ハチ公物語』をヒットさせた神山征二郎監督が故郷をテーマにした映画の撮影で岐阜にいらしていて、私と監督は親戚の知人という縁もあって、直接電話で「助手になりたい」ってお願いしたところ、現場の手伝いを徳山で2〜3日させてもらいました。「助手になりたい」という件は、大学を出てからでも遅くないから、それから考えなさいと……。
(神山征二郎監督の映画『ふるさと』は、1983年公開の映画で岐阜県揖斐郡徳山村が徳山ダム建設のため湖底に沈むことをテーマにした作品)
そういった経緯もあり、芸術系の大阪芸術大学・写真学科に進学しました。カメラが大好きだからということではなかった。
でも、そのころ流行っていたドラマ『池中玄太80キロ』の中で報道カメラマン役の西田敏行さんが、キヤノンのカメラを持っていて、その姿がカッコイイなって。これは、カメラマンもありだなって思いはじめましたね。
当時、宇崎竜童さんに憧れていて、彼がCMの中で持っていたカメラが、Canon AE-1だった。じゃあ、Canon AE-1を買おうと(笑)。
うらら:動機はいつも、カッコイイということからですね!
ハヤシ:そうなんですよ。それから、ライフワークとして1年間テーマを決めて撮り続けなさいという、岩宮武二先生の授業がありました。友人に何を撮るのか尋ねると、奈良の史跡を撮るとか、花を撮るとか……。私は、そんなのつまんないなって思っていました。高校時代からあるタレントさんを追いかけて撮影をしている友人の話しを聞いて、自分も大阪っぽいものを撮りたいなって頭に浮かんだのが、横山やすしさんでした。それで、吉本興業に「大阪芸大の学生で学校の課題でやすしさんの写真を撮りたい」って電話をしたら、本人に聞いてみますねってことになって……。そういうことは受け付けてませんと言われると思っていたのでびっくりしました(笑)。
うらら:さすが吉本興業、面白いですね〜。
ハヤシ:1週間後に電話をかけたところ、ABCホールでやすしさんの番組をやっているとのことで、会いに行きました。やすしさんに「話は聞いとる。カメラを見せてみろ!」っていわれ見せたところ「こんな汚れたレンズで俺を撮るんか!」って怒られたんですけど、半分お手伝いをしながら1年半ほど撮影させていただきました。その撮影がとても面白かったですね。役者やアーティストのような自分を持っている人とコラボレーションすることが好きになりましたね。
ハヤシ:卒業後は、広告会社のスタッフカメラマンとしていったん入社しましたが、学生時代の担当教授でもあった坂本樹勇氏のアシスタントを経て上京しました。
そのころはグラビア全盛期で、小沢忠恭さん渡辺達生さんなどが活躍をされていた時代で、『スコラ』とかが流行っていたころ。平成元年に東京に出てきたんですけど、グラビアで食べていく自信は当時はなかった。そんなときにダイビング雑誌を見ていたら、カメラマン募集の広告が。寮完備(マンション)と記載されていて、岩城滉一さんがドラマでタンク持って歩いているシーンを見てカッコイイって思ってましたしね。これだって思いました。
うらら:またまた、カッコイイということからですね!(笑)
ハヤシ:カメラは好きなんですけど、入りかたがいつも不純なんですよ(笑)。その雑誌の水中写真専門プロダクションに履歴書を出したところ、歓迎されて「あなたみないな人に来てほしいと思っていた」と言われました。でも、水中写真を一度も撮ったことがなかったんですけど……。
その後、その雑誌で編集の仕事もするようになり、自分で撮った写真をまとめ文章も書きました。企画も立てましたね。その中で、ダイビングを趣味にされているタレントを取材するコーナーを企画し、撮影するようになりました。ますます、やっぱり撮るならタレントかなって思い、取材中に怪我をして、ダイビングが出来なくなったこともあり、そのプロダクションを辞めて、タレント専門のフリーカメラマンになりました。
以前お世話になった、神山征二郎監督にフリーになりましたと報告をしたところ、映画の現場の仕事を入れていただきました。九州でのロケでスチールからポスターまですべて撮影させていただきました。出演者も蒼々たるメンバーで、自信がつきましたね。
(神山征二郎監督の映画『月光の夏』は、1993年公開の映画で実話を元に作られた、ある特攻隊員にまつわる物語)
それから10年ほどグラビアの仕事を続けました。
ハヤシ:その後、ある大手プロダクションの専属に。当時、まだデジカメを持っている人が少ない時代でした。Nikon
D1Xが発売されたころですね。専属ですので、写真の絵作りは自由にさせていただけたので、有名なタレントを自分のイメージで撮影できる。タレントとの会話の中でタレント自身が撮ってほしい写真がわかるようになりましたね。また、事務所サイドが撮ってほしい写真、クライアントが撮ってほしい写真も同様に。広告をガッチリやっているカメラマンとは違ってディレクターがいるわけではないですから、おまかせしますといった写真。今の自分のスタイルになってますね。
うらら:それでは、ハヤシさんのお気に入りのカメラとレンズを教えてください!
ハヤシ:ライカ(LEICA)S2とレンズは、ズマリットS(SUMMARIT-S) f2.5/70mm ASPH. CSとアポ・マクロ・ズマリットS(APO-MACRO-SUMMARIT-S) f2.5/120mm です。
専門学校名古屋ビジュアルアーツで特別講師をさせていただいており、名古屋に通っていることから、地元のガールズユニット「Jpeg」の作品撮りを依頼され、ちょうどセントラルパーク(名古屋市中区)内のセントラル・ギャラリーでのイベントの話もあって、その会場で「Jpeg」を撮影した個展を開催することになりました。今回の写真展ではB1サイズ以上に伸ばそうと思っていたので、ライカS2を選びました。
ライカのコダック社製CCDってイイんですよ。CMOSとは立体感が違いますね。また、35mmと比べると同じ条件で、たとえ画素数が同じレベルでも差は歴然です。しかし、ライカのカメラは機械的には若干使いづらい。特に人物撮りでは、バッファメモリが小さいから“固まる”し、復旧するまでに時間がかかる。それがドイツ製のカメラらしいところでもありますけどね。私はNikon D1Xの絵が好きでした。Nikon D1Xも実はCCD。やっぱり、あの質感が好きなんですね。Nikon 800EやEOS-5D Mark IIIが最近のデジタルの絵なんですけど、あのNikon D1Xの衝撃的な絵とは違うんですよ。ライカはSになって改善され、バッファメモリも倍増(2GB)になり、フォーカスの部分も変わり、Sのほうがモデル向きだよっていわれますね。
ハヤシ:レンズは120mmと70mmです。70mmが標準になりますね。ブローニーサイズになりますから、35mmで換算すると120mmが85mmくらいの感覚ですかね。スタジオでは70mmを使うことが多かったかな。ライカS用の専用のレンズです。
色味は仕上がりを見る限りは、マゼンタに転んでいるのかな。Canonのマゼンタに赤味が浮く、人肌にあった感じを、シャープにさせたのがライカの画像。全身を撮影しても肌の質感までしっかりと表現してくれます。また、ライカの絵は後からレタッチをかけても絵が壊れない。シャドーのグラデーションを調整しても平気です。とはいっても、コントラストが最初から強いので撮りっぱなしでも使えますね。
うらら:髪の毛を見ると良くわかりますよね! 一本ずつ鮮明に描写されてますね。
ハヤシ:等倍にしたら、肌の質感がすごい。
高くても売れる理由はそこにあるんじゃないかな?
ボディは250万円ほどで、レンズが50万〜85万円くらいなので、揃えたら高級車が買えちゃいますね。
うらら:なかなか手がだせませんね……。
ハヤシ:先ほど、バッファメモリが小さいから固まるとういお話しをしましたけど、ライカというカメラは枚数を撮るカメラじゃないといわれています。スナップ写真にしても、ここだっていうタイミングでだけシャッターを切る。作られていない決定的瞬間のためのカメラということです。枚数を撮ってその中から一枚を選ぶという撮り方はしちゃダメなカメラ。それが、ライカ流の撮影の仕方。
うらら:一枚しか撮らないという……。
ハヤシ:そう、その一枚に賭けるという感じですね。
ライカの独特の世界にはまっていく人の気持ちが少しわかったような気がします。
LEICA S2 / SUMMARIT-S f2.5/70mm ASPH. CS f11.0 1/125 ISO160
LEICA S2 / APO-MACRO-SUMMARIT-S f2.5/120mm f4.0 1/180 ISO160
LEICA S2 / APO-MACRO-SUMMARIT-S f2.5/120mm f11.0 1/125 ISO160
LEICA S2 / APO-MACRO-SUMMARIT-S f2.5/120mm f5.6 1/250 ISO160
プロフィール
ハヤシアキヒロ(Akihiro Hayashi)
岐阜県出身。大阪芸術大学芸術学部写真学科卒業後、写真家・坂本樹勇氏に師事。水中写真プロダクション、大手芸能プロダクション専属を経て独立。グラビア誌、CDジャケットほかジャンルを問わずタレントの撮影を中心に活動。2012年公開の映画『私の叔父さん』(高橋克典主演、細野辰興監督、連城三紀彦原作)では、写真監修としてメインスタッフ参加。
公益社団法人日本広告写真家協会(APA)正会員。
専門学校名古屋ビジュアルアーツ 特別講師。
★『ハヤシアキヒロ×Jpeg×セントラルパーク展』写真展
期間:7月18日(木)〜7月29日(月) 時間:10:00〜21:00
場所:セントラルパーク(名古屋市中区)内セントラルギャラリー
★名古屋発! プロが教えるロケ&スタジオの撮影講習会
問合わせ さくらフォト 052-741-0171
http://www.photo-sakura.jp/satsueikai.html
プロによる写真撮影の講習会が各地で開催されているが、名古屋ビジュアルアーツで7月28日(日)に開催される「5人のカメラマン×Jpegフォト講習会」は、質・量ともにかなり充実した内容となりそうだ。
講師として参加するのは土屋敏朗、中山達也、北尾浩幸、佐藤倫子、ハヤシアキヒロ。5名とも日本広告写真家協会の会員だ。内容的にはロケ、スタジオなど様々なシチュエーションで本格的な撮影技術を学べるというもの。
1コース90分で、定員は7名。参加料は8000円、前売7000円、学生3000円、女性4500円。
タイムスケジュールは以下の通り(問合わせ先は上記さくらフォト)。
【10:00〜11:30】
A:ロケーション撮影
B:ブロンカラーによるスタジオ撮影
【12:00〜13:30】
A:スナップ&ポートレート
B:蛍光灯ライティング
Cafe(女性限定):美しく撮られるコツ・美しく撮るコツ
【14:00〜15:00】
名古屋のガールズユニット「Jpeg」撮影会(講習会参加者のみの参加特典)
【15:30〜17:00】
A:スナップ&ポートレート
B:ブロンカラーによるスタジオ撮影
Cafe(女性限定):美しく撮られるコツ・美しく撮るコツ
【17:30〜19:00】
A:ロケ撮影 夕景・夜景
B:蛍光灯ライティング