ロック用語解説編もいよいよ佳境に入ってまいりました! イギリスで誕生し、アメリカでも一大ブームを巻き起こしたHR/HMが、欧州ではどのように進化を遂げたのか!? 今回はジャーマンメタルと北欧メタルの二本立てです!
松本●次はジャーマンメタルですね。語感だけの想像ですが、ドイツに渡ってより重くなっていそうな感じがするんですけども。
ikkie▲ああ、もうね、ジャーマンと聞いて想像するそのまんまだと思います。ドイツのバンドっていうのは、アメリカの影響が少ない気がしますね。やっぱりヨーロッパの、イギリスの音が入っていて。それに加えて、なんというか”質実剛健”っていうのがまさに似合うような音が多いです。で、ドイツ人って……怒られるかもしれないけど、ちょっとダサいんですよ(笑)。垢抜けてないというか。
松本●日本とよく似てますよね。
こんな感じ。ACCEPTというバンドです
ikkie▲そう、イギリスよりも、もしかしたらドイツのほうが近いかも。ジャーマンメタルってね、ヘヴィなサウンドにちょっと笑っちゃうぐらいクサいメロディが乗るんですよ。その辺もドイツの独特なところで。オペラティックなヴォーカルが乗るんですよね。高ーい声で。ハイトーンで朗々とメロディを歌い上げるバンドが多いんです。で、野太い声でコーラスするという。
松本●ドイツですねえ!
ikkie▲でしょう(笑)。ジャーマンメタルと呼ばれる前からいたバンドなんかも硬派で、ちょっとマッチョで、ゲイ的なイメージもあったり。レコードジャケットとかが、革ジャン着てるんだけど、下は黒いブリーフで、毛深い太ももが写っている という。
松本●確実にちょっとソッチのほうだって思われちゃうような……。
ikkie▲で、ライヴのアクションとかも、アメリカ人がキラキラした派手な動きをして、それこそ投げキッスするみたいな感じが、ドイツ人はそうではなくて、みんなでフォーメーションを組んで、ギターのネックを左右に振ったりとか、組体操しちゃったりとか。面白いですよ、違いがはっきり出てて。
松本●私は全然知らないんですけど、世界的にというか、有名なバンドというと……?
ikkie▲いちばん有名なのは、SCORPIONS っていうバンドで、70年代から活動してます。いわゆるジャーマンメタルとはちょっと違うんですけどね。日本でもすごく人気があって、『荒城の月 』をやったりとか……。
松本●え、滝廉太郎の?
ikkie▲そうそう。で、70年代からやってるんで、もちろんあの壁があった時代からのバンドなんですね、西ドイツの。ちょうど壁がなくなるころに、『Wind Of Change 』っていう変革の風みたいな歌を歌ったら、壁崩壊のシンボルみたいになっちゃって。たしか全米3位とか4位とかのヒットになったんじゃなかったかな? アメリカでもすごく人気があったんですよ。
SCORPIONS『Black Out』
★ikkie★90年発表の『Wind Of Change』以前から、SCORPIONSはアメリカでも根強い人気を誇っていました。決して一発屋ではないので、念のため。
ikkie▲で、まあ、ドイツのHR/HMといえばSCORPIONS、って感じだったんです。その後にHELLOWEEN ってバンドが出てきて……それがアニメソングみたいなメロディなんですね。ちょっとコミカルって言っていいぐらいの。で、凄くキーの高い、ハイトーンのシンガーが歌うんですよ。それが、結構人気出たんですね、日本でも。で、そしたら、一時期はそんなバンドばっかりになっちゃって。HELLOWEEN以降とか、HELLOWEEN以前みたいな言い方をしたりするんですけど。そんなわけで、(HR/HMシーンでは)一般的にHELLOWEEN以降のバンドをジャーマンメタルと呼ぶことが多いです。
松本●別のものになっちゃった。
ikkie▲別というか、新しいものかな。それ以前もドイツらしい音というのはあったけど、音を聴いて、ああジャーマンメタルだね、っていうのは、HELLOWEENっぽい音を指したりするんです。結構ヘヴィなんだけども、とにかくメロディがクサくて。ヒーローものとかの……マーチっていうのかな、行進曲じゃないけども、勇ましく歌ってる感じのイメージなんです。で、あまりルックスが良くないっていうのも(笑)。
HELLOWEEN 『Eagle Fly Free』
松本●そういう特徴もある(笑)。
ikkie▲いや、カッコいい人ももちろんいるんですけど(笑)。アメリカやイギリスみたいに、見目麗しい人がいたりはしないっていう……これ怒られそうですけども。
松本●なんかお国柄を象徴しているような感じですね。で、その、以前、以降というのが存在しているとなると、ドイツでも(流行の)ゆり戻しがあったりするんでしょうか。
ikkie▲ああ、そうなのかな。でもドイツはね、今でも変わらずヘヴィメタルが人気あるらしいですよ。行ったことがある人に聞くと。もう、メタルかテクノかっていう。KRAFTWERK っていう有名な……YMOとかにも影響を与えたっていうバンドがドイツ出身なんですけど、そういう伝統があるんですかね。テクノの大きなイベントとかもよくやってるし。で、今ね、凄く極端なのが出てきてて。RAMMSTEIN っていうのが。音も、テクノとヘヴィメタルを融合させたような感じで。でね、メンバーの中に、なんか火薬を扱う資格持ってる人がいて、火炎放射器とかを使うんです(笑)、ライヴで。で、ちゃんと免許を持ってるから(火の扱い方が)上手い(笑)。
松本●わはは!
ikkie▲演出が凄いんですよ。バーンって物凄い火柱が上がったりして。KISSとかもやりますけど、それ以上に凄いのを小さい会場でもやれちゃうんですよ(笑)。
松本●そんなところにも職人技がある(笑)。
RAMMSTEIN『Feuer Frei!』
ikkie▲そういうバンドとかが今人気あるらしいんですけど、結構ヘヴィですよ。それで、すごく下ネタ満載のライヴをやったりするんですよね。男が好きそうなバンドです。ま、どっちかっていうと……そうだな、イギリスのバンドとかドイツのバンドっていうのは男に人気があるんです(あくまでもHR/HMバンドに関しては、ですよ)。
松本●ああ、そんな感じしますね。で、カリフォルニアは逆に……。
ikkie▲そう。カリフォルニアに行った時に初めて女の子のファンがついたという。日本でもそうだったみたいですね。それまではやっぱり、むくつけき野郎ども、みたいなのが集まっていたのに、そこに女の子たちが入ってきたのは、やっぱりLAメタルからなんですって。
松本●それは明らかに地域柄を感じますねえ。Tシャツとスニーカーで……。BAY CITY ROLLERS とか思い浮かべればいいんでしょうか?
ikkie▲そうですねえ。BAY CITY ROLLERSはイギリスのバンドですけども(笑)。まあでも、時代が変わって、今度はHR/HMバンドでも、アイドルみたいな扱いをされるようになったんですよね。BON JOVIなんて、最初はアイドル扱いをしている人がたくさんいましたからね。
松本●そういうふうに書いてらっしゃいましたよね。なるほど、そこもやっぱりお国柄、土地柄なんですねえ。
ikkieのお気に入り RAGE 『Solitary Man』
(次回へつづく)
※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
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