まだ記憶に新しい本年(2013年)2月6日の“首都圏大雪騒動”。
ホントに大雪となった1月14日に勝るとも劣らない降りになることでしょう、そんな感じの文句で週頭から煽りに煽られた当日であったが、ご存知のとおり首都圏では午前中にやや雪が舞った程度。明け方から通勤・通学時間は雨だったことから、大きな混乱もないまま終わった……のではなかったのは、こちらもみなさんご存知のとおり。
大雪を見越して、JR東日本の幹線電車や京王電鉄など一部私鉄も東京西部を走る路線で一部運休(いわゆる“間引き運転”)があらかじめ決定、実施されており、雪の影響など見られない、感じられないのに運行本数が少ないというある種最悪の状況(←言うまでもなく、これは駅員としての目線)、そして最悪の混乱となってしまった。
まだ雪が残る日の中央線。
これくらいならもちろん問題なしそう、雪の影響はほとんどなかったのである。それなのにいつも乗るべき電車は走っていない……誰しもが「降ってないのだから走らせろっ」と思ってしまうこの状況はなぜ起きたのか。今回はこの件をJR東日本の広報に訊いてみた。
まず6日の午前中の運行について。各路線とも始発から通勤・通学時間帯まで雨もしくは運転に影響のない程度の雪だったが……
「2月6日に関しましては、雪が降る、電車の運転に影響がある積雪が見込まれるとの予報が前日から出ておりましたので、列車の本数を削減する予定をあらかじめ組んでいました。臨時となるダイヤや人員の配置にも多少影響するのですが、たとえば各線の始発の時点で雪が降っていない、降っていても影響のない状況でしたら、徐々に平常通りの運行に戻していくことはできます。
結果的に6日は早い時間からそのような状況ではありましたが、予報自体は断続的に『午前中一杯は首都圏で10センチ程度の積雪が見込まれる』となっていましたから、午前中は引き続いて本数を削減しての運行とし、積雪の恐れがなくなった午後から徐々に平常通りの運転に戻していきました」
「雪が降り積もるかもしれない」という懸念から本数を削減したのだから、それが払拭されない限りは間引き運転を続けたわけである。
もうひとつ、安全を確保するために間引き運転をする理由とはなんなのだろうか。全路線運休になるような大災害はともかくとしても、たとえばノロノロ運転しかできないような積雪があった場合、平常通りの運行本数でも少なくしたとしてもノロノロ運転には変わりないと思うのだが……
「特に朝の時間帯ですが、JR東日本の各線は平常でもかなり過密ダイヤとなっています。そうなりますと、これは雪などの災害だけでなく、なにかのトラブルがあった場合もそうですが、運転を見合わせている間に隣駅までは着ける列車と、そうでない列車に分かれてしまいます。駅と駅の間に取り残されてしまう列車ができてしまうわけです。駅に着いていればドアを開けることもできますが、駅間にいる場合は、そこから歩いて駅に向かっていただくような状況にならないとドアを開けることができない、つまりお客さまが列車内に閉じ込められてしまうことになります。
以前そのような状況に長くお客さまを置いてしまったことの教訓から、今回ならば雪の影響により途中で運転できない状況になってもなんとか駅には到着できるよう、運行本数を調整し削減するのですね」
なるほど。A駅とB駅の前後中間に3列車いたとしたら、避難しようとしても真ん中の列車が駅間に取り残されることになるが、これが2列車ならばどちらも駅にはたどり着くことができる。閉じ込められた列車内がパニック状態に、なんて報道を見た経験がある人も多いだろうが、これがラッシュアワーの満員電車で起こったら悲劇となるのは間違いない。
雪深い地方には雪かき用の列車が。
こちらは松本と糸魚川を結ぶ大糸線の排雪列車利用客も鉄道会社も振り回された2月6日の朝。間引き運転のため私鉄線への振替乗車が可能だったことが充分に告知されていたか(主にテレビ・新聞頼みになるのだが)などの問題はありそうだが、改めて見てみると、JR東日本の対応は理に適っていたことはわかる。それだけに混雑の最中、よりによって山手線内で人身事故があったのは双方にとってお気の毒としか言いようがない。
雪は降らず、電車は少ないところに人身事故でついに運転まで見合わせ。駅構内には怒号が飛び交い、翌日になっても駅員を罵倒する人も多数いたとか。
「降ってないのだから走らせろっ」、それはごもっとも。ごもっともなのだが、むしろ文句を言うなら「雪が降る」と予報してハズした“予想屋”のほうに言うべきじゃないか、いまもってそんな気がするのだが。