休日に目が覚めたとき、ふと「旅へ出たいな」と思ったとする。
この瞬間から、「出たいな」だけでない様々な思いもまた同時にやってくる。たとえば「行っても込んでるのではないか」、「明日は月曜日だから仕事だ」、「そういえば夜に片付けるべき用事があった」……などなど。
冷静にそれらの思いを分析して、やはり旅は取り止め。結果的にその旅先は込んでいたと知り、夜の用事を片付けて、翌日颯爽と仕事に向かう。これがその場の選択としては間違いないのでは、と思う。私などは「込んでた」って一点だけでなんとなくそう思ってしまうのだが。
しかし、本書の著者・浅見帆帆子の捉え方は違う。「旅へ出たいな」とひらめいた瞬間から、結果的に旅に出られるようになっている、逆に旅に出られるからこそそうひらめくのである、と。旅に出られなかった場合は、先に挙げたような「出られない理由」を選んだだけで、実際に行ってみたらそんな「出られない理由」も簡単に片付いたり大したことではないもので……どうあれ翌日、会社には颯爽と行かないといけませんしね(笑)。
ひらめいた旅路、その思いに任せてみたら翌日やその先の未来に繋がるリフレッシュや、自分や自分のやりたいことなどの新たな発見に繋がる――。帯にも「プライベート」とあるように、そんな実例が山ほどちりばめられているのが本書『だから、本音がいちばん!』である。
著者は大学卒業後にロンドンへの留学を果たし、当地でアンティーク物を中心にインテリアデザインの勉強をして帰国。家庭教師の傍ら、ある出版社の内装デザインをしている際に、その出版社社長に話した“ロンドンでの幸運を呼び込んだ体験”が共感を呼んで『あなたは絶対! 運がいい 』(廣済堂出版)を上梓。先に記した“ひらめいたからには結果的に旅に出られる、逆に旅に出られるからひらめく”など目からウロコの発想から導き出された思考、行動を綴った著書をその後も数多く出版し、累計では400万部を越えるベストセラー作家である。
近年はジュエリーブランド「AMIRI」を立ち上げたり、介護ユニフォームのプロデュースを手がけるなど、活動の幅を広げ、女性を中心に大きな注目を集めている。
本書は“プライベート初公開”であることで、より身近な視点から“帆帆子流・自然な生き方”が綴られている。日常様々な選択を“素直”に……いや、ここはタイトルから“本音”で捉えることによって、インテリアデザイナーを仕事にすることも漠然としていた著者が作家になり、ジュエリーブランドを立ち上げ、いま力を入れている「アジア平和」に取り組むようにまでなった実例が明かされている。多種多様な選択に迷う毎日を送っている人が多い中、人材教育や研修用に著書が用いられているのも頷けよう。
もうすぐ新年度。学校に会社に新しい出会いが生まれる、そんな時期だからこそより注目したい一冊だ。
作者名:浅見 帆帆子
ジャンル:エッセイ
出版:朝日新聞出版