首都圏が(首都圏にしては)大雪に見舞われた成人の日、わたくし、久々にライヴをやってきました。さすがにいつもよりお客さんは少なかったものの、たいへん楽しくやれたんですが、それ以来、体中が痛くってねえ……いや、ライヴが久しぶりだったからとかじゃなくて、行き帰りの道程がね。雪国育ちとしては恥ずべきことですが、ギターと機材を抱えたまま、二度もつるんと転んでしまいまして。ようやく胃痛も治まったというのに、今度はどこか筋を痛めてしまったようです。おっさんになるといろいろ大変ですね……。さて、今回のロック映画は、そんな俺よりも(?)、さらにさえなく見えるロックオヤジ(何歳の設定なのかわからないけど)が主人公の『スクール・オブ・ロック 』です!
ギターの才能はあるものの、デブで自分勝手なデューイ。バンドをクビになり、さらに同居している友人で臨時教師のネッドとそのガールフレンドに家賃を払わないなら家を出て行け、と迫られてしまう。困ったデューイはネッドになりすまし、名門私立小学校に臨時教師として潜り込む。それでも給料が現金払いではないと知って逃げ出そうとするが、生徒たちの音楽の才能を知り、研究課題と偽ってバンドを結成させ、バンドバトルへの出場を目論む……、というのが大まかなストーリー。えー、もうお気づきでしょうが、今回もコメディです(笑)。
子供だからってそんなに簡単に騙せるかい、という突っ込みは当然あるけども、素直な名門小学校の生徒たちは、一生懸命おかしな先生の授業についていきます。で、この授業がまたおかしいんだ(笑)。ロックの歴史はまだしも、ロックとは規則に反発し、大物に反抗することだ!と熱弁して、生徒たちの「小遣いが少ない」、「お手伝いばっかり」、「いじめっ子はあっち行け」といった不満を歌詞にロックソングを作ったり、ロックな表情の作り方(笑)を教えたかと思えば、予習しておけとロックアーティストのCDを渡したり。それも、ドラム担当の生徒にはRUSH を渡して「ニール・パートは最高のドラマーだ。よく学べ」とかね、ロックファンならクスっとしてしまうネタだらけ。
こういうネタなんかが、俺みたいなロックマニアを納得させる理由……なんて書くと偉そうだけど、ロックがわかってる人が作っているのかどうなのかはすごく重要なんだよなあ。日本の映画やドラマなんかだと、どうもこのへんが適当なのが多くてね。ギターの弾き方がめちゃくちゃなのに、天才ギタリストの役だとかさ。そんなのもう、ストーリー以前の問題で、まったく入り込めない。ロック以外の専門職の方なんかも、映画やドラマを観て「無理があるなあ……」とか気になることがあるんじゃないでしょうか。まあ、教職に就いてる方がこれを観たら「こんな教師がいるか!」と言うだろうけど(笑)、ロックものを作るなら、知識はもちろん、ロックに対する愛情がないと絶対ダメ。
デューイ役のジャック・ブラック(『ガリバー旅行記』 、『愛しのローズマリー』 等)は、自身のバンドTenacious D でアルバムを発表したり、そのバンドが主人公のロック映画 も製作。DVDの特典映像を観ても根っからのロックファンだというのが伝わってくる。だから、ロックネタにしても言わされてる感がないんだよね。ギターだってもちろん自分で演奏しているし、歌も結構うまい。また、暑苦しくて騒がしい勘違いロッカー役がはまってるんだよなあ。そして、生徒役の子役たちも実際に演奏しているそう。演奏できる子供をオーディションしたというから、製作スタッフのこだわりがわかるよね。ライヴシーンも、デューイ先生の授業が良かったのか(笑)、実に堂々としたパフォーマンスで、ちょっと感動します。おっちゃん、ホロっとしちゃいました。
生徒たちにはオーケストラではなくロックバンドをやらせるわけで、楽器からあぶれてしまう生徒たちも出てくるんだけど、デューイは彼らをうまくおだてながら、不平を感じさせずマネージャーや照明などの裏方を担当させます。それが結果的に生徒たちの隠れた才能を引き出すことにもなって、劇中の子供たちの表情がどんどんイキイキとしだしてね。その辺もこの映画の見どころ。以前紹介した『スパイナル・タップ』なんかは、正直言ってロックファン以外には厳しいと思うんだけど、この映画はロックファン以外でもきっと楽しめるはず。もちろんロックファンは文句なしに楽しめるだろうし、そうでない人にはわからないマニアックなネタに優越感を感じつつほくそ笑む、という楽しみ方もありますよ(笑)。
ロックギター教室をやってる俺が言うのもなんだけど(笑)、楽器はまだしも、ロックって学校で習うものじゃないと常々思っていて……習うより、覚えるものだし、考えるよりも感じるものだと思うんだよね。でも、こんな先生なら教わるのも悪くないかも。俺も参考にしてみます(笑)。!
※ikkieがなんと「出張ギター教室」を始めてしまいました!
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