第60回 洋楽編 Richie Sambora――リッチーのソロがBON JOVI不在を埋めてくれる悦び

いつのまにかもう9月になっちゃいましたねえ。まだまだ暑い日が続くけど、朝晩はだいぶ過ごしやすくなったかな。夏は大嫌いなのに、もうすぐ終わると思うとなんだか寂しくなる近頃のワタクシです。さて、今回は15年ぶりにソロアルバム を発表した「BON JOVI」のギタリスト、リッチー・サンボラ! これを書いている今、その新しいソロアルバムはまだ俺の手元には届いていないんだけど、この原稿がアップされるころには届いているといいなあ。


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BON JOVIというバンドは、その名前が示すとおりジョン・ボン・ジョヴィが中心のバンドで、あくまでジョンがスターなわけだけど、BON JOVIの楽曲は大半がジョンとリッチーの共作だし、リッチーはその存在感も含めて、ジョンに次ぐとても重要なメンバーです。ハリウッドスターと数々の浮名を流したり、飲酒運転で逮捕されてしまったりと、アメリカ本国ではゴシップ記事の常連セレブらしいけど(苦笑)、日本にはその辺はあんまり伝わってこないから、アメリカとは違って、純粋にアーティストとして高い評価を受けているんじゃないかな。

ただ、BON JOVIがデビューしてから二枚目のアルバムぐらいまでは、リッチーはそれほど注目される存在ではなかったと記憶しています。改めて聴いてみると、年齢のわりにはすごく堅実なプレイで、当時から相当な実力者だったことがわかるんだけど、あのころはギターヒーロー群雄割拠の時代だったから、派手なソロを弾かず、楽曲に合った控えめのプレイをするリッチーは地味な印象でねえ。俺も、バンドのファンではあったけど、リッチー自身にはそれほど注目していませんでした。甘いルックスや人の良さそうなキャラクターで、女性からの人気は高かったけど。

そんなリッチーの印象がガラッと変わったのは、三枚目のアルバム『Slippery When Wet 』を聴いてから。ギターも段違いに良くなっていたけど、『Wanted Dead Or Alive』での迫力あるバックヴォーカルに驚いたのは、俺だけじゃなかったはず。ギターじゃなくて歌かよ、というツッコミはあるだろうけど、リッチーのギターの凄さは子供にはちょっとわかりにくかったかな……。でも、歌の凄さは子供にもよくわかった。ジョンより上手いんじゃないかと思ったし、リッチーみたいになりたくて、相当真似したもの。自分は歌えるギタリストだと思ってたし……(苦笑)。まあ、俺のことは置いといていいんだけど、あの歌声を聴いて、リッチーに対する認識が変わった人も多かったんじゃないかな。

BON JOVIには一時、解散の危機があって、活動休止中にメンバーたちはそれぞれがソロ活動を始めたんだけど、リッチーは予想どおり、自分が歌うアルバム を発表。バンドのギタリストが作るソロアルバムって、やたらとギターソロが長かったり、下手な歌が入っていたりと、つまらないものも少なくない。でも、リッチーの場合は、ギタリストが片手間に歌ったようなものではなく、本職のシンガーでも降参したくなるような、ソウルフルで堂々とした歌声が聴ける名盤でした。もちろん歌だけではなく、俺が主役だから当然でしょ、と言わんばかりに伸び伸びと弾くギターの魅力的なことといったら、あーた! リッチーってやっぱり凄い、と思いましたことよ。正直なところ、これだけやれる人なら、このままソロアーティストになってしまうかも……なんて、若干不安になるぐらい完成度が高かった。バンドが復活しなければ、エリック・クラプトンみたいになっていたかもしれない。それはそれで聴いてみたい気もするけど、まあやっぱりBON JOVIがなくなるのは嫌なので(笑)、たまにソロアルバムを出してくれるぐらいがちょうどいいなあ。

リッチーはその後のバンドの活動休止期間にもソロアルバム を発表。一枚目よりもハードロック要素が少ない、よりアーシーで大らかなアメリカンロックで、もうBON JOVIのギタリストっていう看板いらないんじゃないの、ってぐらいの風格も出てた。でも、そのころのBON JOVIはもう安定期(?)に入っていて、リッチーの脱退を心配する必要もなかったし、来日ライヴも大いに楽しみました。この、BON JOVIが不在のときにはそれぞれのソロを楽しめるっていうローテーションは嬉しいかも(笑)。

さて、今回のソロアルバムはその二枚目から15年を経ての発表。先行して発表された楽曲はリッチーらしい伸びやかな歌唱が特徴的な曲で、良い意味でも悪い意味でもアルバムの内容が想像つく感じ(笑)。ただ、アルコール依存症、おまけに逮捕……なんていう、リッチーどうしたの?! という事件を乗り越えての活動再開なわけだから、もう諸手を挙げて大歓迎です。まあ、本音を言えばそろそろBON JOVIが聴きたいし、観たいんだけど(笑)、一味違うリッチーのソロももちろん楽しみ! 来日してくれるといいなあ。