アカデミー賞に2度も輝いた実力派俳優のデンゼル・ワシントンが、ダークサイドに堕ちた伝説の元CIAエージェントを怪演。全米オープニング成績4000万ドルで歴代1位の新記録、7週連続トップ10入りと、デンゼル出演作の中でも最大級のヒット作となっている本作。脚本、演出、キャスト、アクション、すべてにおいて最上級のアクション・サスペンス傑作の誕生だ。
CIAの新人マット(ライアン・レイノルズ)は、最前線とは程遠い南アフリカのケープタウンで、セーフ・ハウスと呼ばれる隠れ家の管理人という閑職でくすぶっていた。退屈な日々に嫌気がさし、上司に工作員としての昇進を申し入れても取り合ってはくれない。ところがある日突然、その隠れ家に来客が訪れる。その来客とは、10年前に国家を裏切り、国家機密を密売する元CIAエージェント、トビン・フロスト(デンゼル・ワシントン)だった……。
大傑作を語るのに、ダラダラと説明じみた言葉を並べるのは野暮というものだ。何年かに一度、そうした作品は現れる。逆を言えば、何年かに一度しかそうした作品は我々の前に姿を現さない。本作は紛れもなく、そうしたきら星のひとつだ。
一方、たいして起伏やリアリティのないダメダメな脚本でも、大監督をつけて派手な見せ場を作ってスター俳優を配せばそこそこのヒットとなる。観客の中には「映画を観に」行くのではなく、話題作を観に行ったという実績がほしいだけ、また好きな俳優が観たいだけで「スクリーンを観に」行くだけの人種が少なからず存在するからだ。また、宣伝が素晴らしいというのも興行を大きく左右する。だがこうしたケースの場合は、動員が凄まじいのは初動だけだ。
本作は各紙の評価も高く、アメリカ公開では異例の2週目以降での逆転No.1獲得で着実に動員を伸ばし、口コミが口コミを呼んで驚異のヒットとなっている。極上の脚本がプロデューサーを動かし、デンゼル自身が製作にも名を連ねるほか、錚々たる顔ぶれのキャストにも恵まれる。そして自称映画オタクの監督が、本作でハリウッドデビューにも関わらず映画を知り尽くした熟練かのような演出をし、それを観た観客の評価が次の観客を呼び……という真の「ホンモノ」のループが確立されているのだ。
原題は、舞台となる隠れ家の意で『Safe House』。緊急事態が起こった際にCIAがいつでも使えるように日々管理・保守されている家屋だ。この描写にも元CIAを特別アドバイザーに迎え、リアリティの追及にいとまがない。過去に何度か申し上げているが、「世界」をもう一つ作り上げなければ、その世界に観客を引き込むことはできない。本作は全編における隙のない緻密さにおいて、「世界」を作り上げることに大成功している。
リアルな銃撃戦とカーチェイス、役者の表情がすべてを語り、意外な展開の中、逃亡劇はいつしかバディムービーとなり、観る者の心に大いなる問いを投げかけ、そして純粋な涙へと導く。観終わる頃には、ニューヨーク・タイムズ紙も言うようにトビンの過去を描く続編が無性に観たくなってしまう。この作品をいつの間にか愛してしまっている自分に気づくのだ。
監督:ダニエル・エスピノーサ
脚本:デヴィッド・グッゲンハイム
出演:デンゼル・ワシントン/ライアン・レイノルズ/ヴェラ・ファーミガ/ブレンダン・グリーソン/サム・シェパード/ノラ・アルネゼデール
配給:東宝東和
公開:9月7日(金) TOHOシネマズ 有楽座ほか全国ロードショー
公式HP:http://d-run.jp/
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