あのレオ様が老けメイクで初代FBI長官J・エドガーを熱演する本作。監督のクリント・イーストウッドとレオナルド・ディカプリオが初のタッグを組んだ意欲作は、権力の頂点に登りつめた男の光と影を浮き彫りにする。
書記を務める広報官に自らの過去を語るJ・エドガー・フーバー(レオナルド・ディカプリオ)。FBI長官として40年経った今、自身の回顧録を作ろうというのだ。1919年の左翼急進派による爆弾テロ事件を初め、様々な事件における自分の立ち回りを振り返るフーバー。そして彼の活躍には、秘書のヘレン(ナオミ・ワッツ)や片腕のクライド(アーミー・ハマー)の支えが不可欠だったこともが思い起こされていった……。
とかくディカプリオの変身ぶりが話題になる本作。額が後退したりメタボだったりのあまりイケてない姿が晒されているのだから、レオ様をアイドル視していたファンたちには少しばかりショックかもしれない。
肝心の中身はといえば、いわゆる楽しめるエンタメを求めている方々にとっては物足りない印象を残すだろう。取り立てて派手なシーンがあるわけでもなく、ミステリーやサスペンスの要素もない。
左翼の脅威に怯えるという心理も今日の日本ではあまり感情移入できない人のほうが多いだろう。指紋での捜査方法を確立し国を守った男としての光の側面と、母親(ジュディ・デンチ)への承認欲求に悩み、認知されえないジェンダーをひた隠しにし、屈折してしまった人格という影の側面。あくまでも淡々と描かれるこのストーリーは、どんな光をもってしても影を駆逐することができなかった一人の男の悲しさを炙りだしていく。
フーバーの20代から70代までを演じたディカプリオとしてはぜひとも念願のアカデミー主演男優賞を手にしたいところだろう。派手さには欠けるが超真面目系、かと思えば「え?」という意外なクライマックス・シーンも盛り込んだこの静かな意欲作は、彼に栄冠を与えてくれるだろうか。
監督:クリント・イーストウッド
脚本:ダスティン・ランス・ブラック
出演:レオナルド・ディカプリオ/ナオミ・ワッツ/アーミー・ハマー/ジョシュ・ルーカス/ジュディ・デンチ
配給:ワーナー・ブラザース映画
公開:1月28日(土)、丸の内ピカデリー他全国ロードショー
公式HP:www.j-edgar.jp
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