わが家の本棚ははっきりふたつに分かれている。なぜなら夫と私の読む本はまったくもってジャンルが異なるからだ。
簡単にふたりの読む本の種類を分けると、大きな差は「1ページに対する文字の量」。文字が少ないのは……夫じゃなくて私のほう。
フィクションにしろノンフィクションにしろ、私が読む本は“想像力”というより“空想力”を使う本がほとんど。その中でも私が中学生のころから愛読している“空想本”、それがこちら。
私がこの本に出会ったのはたしか中学校の図書室の片隅、理科系の本棚だったはず。
なぜこの本が中学校の本棚にあったのかはわからないが、これは明らかに中学生向きの本ではない。
当時の私は星座早見版がお気に入り、家のベランダから夜空を見上げてばかりいた。すでにこの頃から“現実逃避型人間”として人生を進みはじめていたのだろう。
この本は目の前に広がる夜空に実際にあるはずなのに、私には見えない月や星たちでいっぱい!!
そしてなにやら漢字の難しい行が、私を大人びた気分にさせた。
すっかり虜になってしまい、借りては返し、返しては借り……卒業までの間、何度も自分の手元にあった。
「そんなにお気に入りなら買えばいいのに」と今となっては思うが。当時の私にとってこの本はとっても高価であり、そして自分の本棚に無いということが“大人の本”である魅力を余計に引き立たせた。
自分の本にならないまま、この本と再会したのは20歳の誕生日。誕生日プレゼントとして再会。この本が自分の本棚にある、これで大人の仲間入りだ!!
……と、まぁ。この本と私のなれ初めはこの程度にして、この本のすばらしいところは「図鑑」と「辞典」と「写真集」の要素がほどよく全部含まれてること。
ときに月齢ごとの月の呼び名を調べたり、星座の神話を調べたり。ただボーッと夜空を思って写真を眺めて現実逃避したり。
田舎や山や海など……空気が澄んでて自然の多いところへ旅に出るときはぜひ持って行きたい1冊である。
そんな場所でビール片手にボーッと夜空を見上げながら流れ星のひとつでも見れたらどんなに幸せだろう。
とにかく空想してほしい。
せわしない現代社会で夜空を見上げること忘れていないだろうか?
今、見上げている夜空……本当はこんなに無数の星が存在しているなんて考えただけでわくわくする。もしかしたら、その見えている星はすでに存在しないかもしれないなんて神秘的だ。
目に見えないことを想像して時を過ごす、これぞ現実逃避の極み。
この本はそんな私をトリップさせてくれる素晴らしい本なのである。
もうひとつ思い出した。
仕事の帰り、口を半開きに夜空を見上げて歩いていた若かりし日々。
あぁ、何度 電柱にぶつかったことか……。
作者名:林 完次(写真も)
ジャンル:図鑑
出版:角川書店